日銀が保有する国債の含み損が2022年12月末時点で9兆円規模になったことが17日、わかった。日銀の政策修正で金利が上昇(債券価格は下落)し、9月末の8749億円から10倍以上になった。政府が発行する大量の国債を日銀が事実上無制限に引き受ける構図に、市場の視線が厳しさを増す可能性がある。
17日に日銀が発表した22年10~12月期の資金循環統計(速報)によると、日銀が12月末時点で保有する国債は時価ベースで554兆6476億円だった。すでに公表している同じ時点の簿価(564兆1557億円)を使い、日本経済新聞が含み損を試算したところ、9兆5081億円になった。
日銀は半年に1度の決算で3、9月末の国債の含み損益を公表している。昨年9月末時点で、量的緩和を解除した06年3月以来、16年半ぶりに含み損が生じた。黒田東彦総裁は2月の衆院予算委員会で、昨年12月末の含み損が約8.8兆円だったと説明していた。
日銀は長期金利をゼロ%程度に誘導するため、大量の国債を買い入れている。12月には長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げた。幅広い年限の国債利回りが上昇し、含み損が拡大した。
国債市場で日銀の存在感は際立っている。12月末時点の短期国債を除く長期国債の保有残高は時価ベースで546兆9301億円となり、前年同期比で5.9%増えた。発行済み国債に対する日銀の保有割合は52.0%と過去最大を更新した。
短期国債を含めた保有比率は46.3%と、保険・年金(19.4%)や海外(13.8%)、銀行などの預金取扱機関(12.5%)に比べて格段に大きい。日銀以外は保有残高を軒並み減らしており、国債の買い手がほぼ日銀だけという異例の状況になっている。
日銀は国債について満期保有を前提とした会計処理を採用しており、時価が下落しても直ちに経営が悪化するわけではない。ただ、含み損の拡大で市場が日銀の財務に不安を感じ始めれば「投機筋の攻撃を招き、為替や金利に影響が及ぶ可能性もある」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏)。
家計が保有する金融資産残高は0.4%増の2023兆円と過去最高を更新した。内訳では現預金が2.1%増の1116兆円で過去最大となり、全体の55.2%を占めた。経済活動の再開や物価高で家計の支出が増えており、伸び率は鈍化している。
株安や金利上昇が響き、株式は5.1%減の199兆円、投資信託は5.6%減の86兆円となった。ただ、価格変動の影響を除いた株式・投信の純流入額は8四半期連続でプラスとなっている。物価高で現預金の価値が目減りするなか、「貯蓄から投資」の流れがじわりと広がりつつある。
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