物やサービスの値段が上がり続けるインフレについて、名瀬加奈さんと日比学くんが山本由里マネー・エディターに聞きました。
名瀬さん「買い物時に値上がりを実感します。日本もインフレなんですか」
総務省の消費者物価指数(CPI)を見ると状況が分かります。CPIは全国の家計を大きな買い物カゴに見立て、582品目の値段を毎月調べて公表しています。足元1月は1年前と比べ4.2%上昇しました。物が値下がりするデフレの長かった日本では、4%台の上昇率は41年ぶりとなります。
特に値上がりが目立つのがエネルギーや食品です。食用油が3割、牛乳が1割上昇するなど食品全体では7%値上がりしています。光熱費も都市ガス代が3割強、電気代が2割といずれも2桁の伸びです。食品や光熱費は生活に欠かせないだけにお財布を直撃します。
昨年の資源高や円安が一服したため、2月以降のインフレ率はエネルギー価格を中心に上昇幅が縮小するとの見方もあります。一方、帝国データバンクによると1〜4月の主要食品メーカーによる値上げは1万5000品目超に達します。インフレとまでは言えなくても物価高はしばらく覚悟する必要があります。
日比くん「インフレになったら何が問題ですか」
経済活動が活発な時に物やサービスの価格が上がること自体は自然です。適正な値上げが消費者に受け入れられ、企業の業績改善につながり、働く人の給料も上がれば家計の購買力は保たれます。
問題は物価と給料の上がるタイミングと幅のズレです。給料が「上がり負け」すれば家計の購買力は低下し、相対的に貧しくなってしまいます。厚生労働省によると、物価変動分を差し引いた実質ベースの賃金は1月に前年同月比4.1%減少しました。長らく賃上げが小幅にとどまる日本で物価高が進めば実質賃金の大幅減に直結します。

名瀬さん「最近は賃上げのニュースをよく聞きます」
今年の春季労使交渉(春闘)では大幅な賃上げを表明する企業が多く、転換点を迎えたとの見方もあります。製造業の主要企業では全体の9割弱が満額回答でこたえ、日本航空のように労働組合の要求を上回る引き上げを決めた企業もありました。今後は賃上げの波が大企業だけでなく中小企業や、雇用者の4割近くを占める非正規労働者にも広がるかが焦点です。
日比くん「家計の注意点を教えてください」
家計管理は収入を増やし、支出を減らすのが基本です。この原則は不変ですが、インフレへの対応でアップデートする必要があるでしょう。
まず賃上げの動きが広がれば、年収アップを求めての転職の選択肢が増えます。収入増に向けて良い機会を見逃さないようにしたいですね。
一方、支出減のハードルはデフレ時代より高くなります。単純な節約以外の対策に目を向けてみましょう。
例えば実質的な支出額以上の返礼品をもらえる「ふるさと納税」により、食品や日用雑貨をそろえる手があります。返礼品は店頭価格が変わる前の値段がベースになるので、時の経過とともに値段が上がるインフレ下では有利といえます。同様の理由から、企業の株主優待にも目を向けたいですね。
逆に量販店などでもらえるポイントには注意が必要です。インフレになればポイントの購買力が先々で目減りしてしまうからです。ポイントはためるよりもその場で使う方が有利といえるでしょう。
銀行預金も目減りする
インフレの時期は物の値段が上がるのとは逆に、現金の価値は目減りします。仮に4%の物価上昇が続くと、お金の価値は18年後に半分になってしまう計算です。銀行預金にも注意が必要。多くの銀行が金利をゼロ%近辺に据え置いたため、物価上昇率を差し引いた預金の購買力は昨年4%近く下がりました。
一般にインフレに強い資産には株式や不動産が挙げられますが、価格変動リスクはあります。変動金利の個人向け国債は国が元本を保証した上で利率が上がる設計なので、インフレに一定の耐性が期待できます。(マネー・エディター 山本由里)
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