22年の3%成長からの立ち直りを目指すものだが、前年目標を0.5ポイント引き下げ、過去最低の成長目標となった。ゼロコロナ政策と不動産セクターの締め付け策を軌道修正したことがこの目標達成の支えであり、無理な浮揚策を取らず安定成長時代を受け入れた目標にもみえる。
達成は容易だろうか。主要国の景気後退から、輸出は毎月、前年同期比でマイナスが続き、通年で過去最高だった22年の再現はない。内需はゼロコロナ解除により人の流れが活発化しサービス消費は回復したが、雇用悪化が足かせとなりモノ消費の回復は鈍いようだ。地方政府の特別債発行枠を過去最大に引き上げたため、インフラ投資は拡大するだろうが、地方の不要なインフラ建設に批判的だった習体制にとっては苦々しい選択肢だろう。気になるのは、中国が22年に人口減少に転じ、今年は人口1位の座をインドに譲る人口動態の転換点を迎えたことだ。少子高齢化は労働力の減少、社会保障負担の増加、貯蓄の減少を生み、経済成長を着実にむしばむ。
退任した李克強(リー・クォーチャン)首相の最後となった政府活動報告を読むと、貿易成長力の弱体化、中小・零細企業の困難、雇用確保、地方政府の財政難、不動産市場や中小金融機関のリスク、イノベーションの伸び悩み等、課題が並ぶ。
中国の景気動向は世界経済に重要だ。1月末に国際通貨基金(IMF)は中国とインドの2カ国で23年の世界経済成長の半分を達成するというシナリオを描き、5.2%成長の中国に期待を託した。改革開放路線が姿を消し、構造問題を抱える今年の中国経済の行方は楽観視できない。過大な期待はリスクであり、下振れへの備えが必要であろう。
(多摩大学客員教授 中湊 晃)
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