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プロ向け投信、富裕層に 米ブラックストーンと大和が国内で 分散ニーズ、解約制限も

米ブラックストーンは4月から大和証券グループ本社と組み、米国の企業に直接融資するファンドを国内で販売する。海外勢が提供する未公開資産ファンドは比較的高い利回りが見込める半面、解約に制限があるなど注意点もある。投資家へのリスク説明が課題となる。

大和が16日発表した。ブラックストーンは大和を通じ、米国で運用する企業融資ファンドである「ブラックストーン・プライベート・クレジット・ファンド(BCRED)」を販売する。ブラックストーンが個人投資家の購入を想定して立ち上げたファンドで、主に低格付けや無格付けの企業に直接貸し付け、資金だけでなく経営ノウハウなども提供する。

貸出金利は四半期ごとに見直すため、金利上昇局面でもリターンが下がりにくい。国内金利は依然低く、運用難が続いている。ファンドはドル建てで、資産分散ニーズにも応えられるとみる。

国内では大和が個人から資金を募って組成した公募投資信託がBCREDを購入する形をとる。最低投資額は5万ドル(約660万円)で、主に富裕層の購入を想定している。解約できる金額には一定の制限がある。

ブラックストーンが国内個人を対象に公募投信を提供するのは2022年4月に続き2例目だ。前回は米国で運用する非上場の不動産投資信託(REIT)で、投信の販売は野村証券が担った。

これまで企業融資や不動産といった未公開資産ファンドの購入は事実上、年金基金や保険会社などの機関投資家に限られていた。最低投資額が数億~10億円程度と高く、通常10年とされる運用期間を終えるまで解約できないなど、資金力のあるプロの投資家しか購入できなかった。

ブラックストーンのような大手ファンドは数年前から、個人でも投資しやすい商品を提供し始めた。最低投資額を数百万円程度に抑え、毎月や毎四半期に購入・解約を受け付けるのが一般的だ。海外で販売する場合は現地の証券会社と組み、現地語で投資家に説明できる体制を整える。

国内では他に、米金融大手ゴールドマン・サックスの資産運用部門が非上場のREITや企業融資ファンドの提供を計画する。米大手ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントも三井住友トラスト・ホールディングスとの協業を通じて、個人向け商品の提供を検討する。

英調査会社プレキンによると、未公開資産の運用規模は個人マネーの流入が追い風となり、27年末には21年末比2倍の18兆3000億ドルに増える見通し。

個人向けファンドでは警戒感も広がる。ブラックストーンのREITは22年末、上限を超える解約請求があったため解約制限を決めた。一部の投資家が上場株や債券などで損失を抱え、埋め合わせのためREIT売却を急いだとの見方がある。米スターウッド・キャピタル・グループや米KKRが運用するREITでも解約請求が増えた。

富裕層のニーズは見込めるが、ファンドの投資対象はもともとプロに限定され、上場株などに比べて情報開示の少ない未公開資産だ。最低投資額は抑えたとはいえ数百万円にのぼる。高利回りをうたう仕組み債ではリスクの大きさや不明瞭な手数料体系が問題となり、金融庁が規制強化に動いた。今回は一般的な公募投信の形をとるが、解約の制限があるなど個人投資家への丁寧な説明が欠かせない。

(和田大蔵)