世界最大の運用会社、米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は15日公表した投資家宛ての手紙で、シリコンバレーバンク(SVB)経営破綻に至る金融システムの亀裂は「長年の金融緩和の代償」と指摘した。信用不安の広がりを「ドミノ倒し」と表し、影響は今後も広がりうるとの見方を示した。
フィンク氏はSVB破綻後の金融規制当局の対応を「今のところ迅速で、断固たる措置が不安拡散を食い止めるのに役立っている」と評価する一方で、予断を許さない状況だと説明した。1980年代に生じた貯蓄金融機関(S&L)危機は「(信用不安は)最終的に約10年続き、1000以上の金融機関が倒産した」と引き合いに出した。
当時と同様の経路をたどるかは不透明だが「一部の銀行が財務強化のため融資を控えるのは避けられない」とみる。資本規制の強化も想定されると記した。銀行業界の不安はほかの金融セクターにも波及する懸念にも触れた。
長年に及ぶ金利低下局面で「一部の投資家は(利回りを求めて)流動性の低い投資にまい進した」と述べ「特にレバレッジを活用した運用をする投資家は今、流動性のミスマッチに直面するリスクがある」と説明した。フィンク氏の念頭にあるのは、非上場株やプライベートクレジット(ノンバンクによる融資)、不動産などオルタナティブ(代替)投資だ。
フィンク氏はESG(環境・社会・企業統治)投資の旗振り役として、例年の投資先企業CEOや株主に宛てた手紙では、気候変動対応の重要性を説いてきた。今回の手紙でも一定の紙幅を割いたが「少数株主である私たちは企業に指示を出す立場にはない」とも述べた。ESGを巡り、フィンク氏が保守派から矢面に立たされている状況を考慮したものとみられる。
手紙では、ロシアのウクライナ侵攻や地政学上の緊張の高まりによって、グローバリゼーションが一段と後退する機運が高まっている点にも触れた。サプライチェーン(供給網)の分断は、国家安全保障に貢献する一方で「短期的には大きなインフレ促進効果を持つ」とした。今後の数年間のインフレ率は「3.5〜4.0%程度で推移する可能性が高い」と予想する。
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