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海外大学へ進学、どうすれば? 奨学金、給付型も充実

ただ、選抜方法などわからないことは多い。受験に向けたスケジュールや手続き、筆記試験はどのようになっているのか。米国や英国などの大学進学を指導するアゴス・ジャパン(東京・渋谷)の松永みどりさんに寄稿してもらった。

 

 

日本国内の進学校では、東京大学などに加え海外のトップ校へ生徒を送り出そうという動きが目立っている。現状ではアジア圏の有力大学へは進学実績があまりなく、狙う先は主に欧米圏になる。

まずハーバード大学やスタンフォード大学など日本でも名前の知られた学校が多い米国について進学までのプロセスを説明したい。

日本からだと4年制大学もしくは、2年制のコミュニティーカレッジが進学先になる。

前者のほうがハードルは高い。同国にはおよそ3000の4年制大学があり、アイビーリーグ校のようなトップランクの大学に必要な語学力は120点満点のTOEFLで105点以上が目安。上位校でない場合は60点以上が必要になる。

そのうえで、学力は「SAT」という統一試験で測る。日本の共通テストと似ているが、米国の生徒と一緒に競うことになる。3・5・6・8・10・12月の年6回開催され、日本でもインターナショナルスクールなどが会場になっている。

何度も受験できるが、すべての結果が記録として残る。科目は「国語」と「数学」。数学は日本の共通テストと同水準になる。国語は文章読解などになるが、ネーティブ向けなので簡単ではない。

エッセーや高校時代の成績、課外活動、推薦状なども重視される。エッセーは、志望理由や大学で学びたいこと、自分の個性などについて英語で書き込む。

手間がかかるのが、高校の教員による推薦状。ほとんどの教員は米国の大学へ推薦状を書いた経験がないため内容が甘い。生徒の優れた点をエピソードとともにまとめ、推薦する思いを伝えなくてはならない。

中身次第で、合格の可能性が変わってくるため、生徒側から書いてほしい内容を伝えることが重要だ。

これら試験の結果やエッセーなどは、米国の大学が共通で使うプラットフォーム「Common Application」から送信する。主要大学の出願締め切りは1月で、結果は3月にわかる。

一方、コミュニティーカレッジは比較的入学しやすい。出願は共通のプラットフォームを使わず、各大学が個別に受け付ける。TOEFLのスコアや高校の成績などが必要になる。

コミュニティーカレッジからは4年制大学への編入が可能。目指す場合は、カレッジでの成績や推薦状、エッセーなどを志望先に提出し、合否判定される。

米国に次いで人気の英国の大学は3年制になる。日本の高校から直接、進学するには国際バカロレア(IB)のカリキュラムに沿った高校を卒業していなくてはならない。そのうえでTOEFLやIELTSといった英語力を示す試験の成績、エッセーなどを提出し、審査される。

IBに対応していない高校の場合は、各大学が設置する予備コースを経て大学への進学を目指す。予備コースに入る際は、高校の成績や推薦状、エッセーの提出が必要。英語力はTOEFLだと80点以上、IELTSだと6.0以上の水準が目標だ。

予備コースでは3年制の大学で学ぶ専門分野に関する基礎を主に習得する。3年制大学へ進むには、予備コースで一定の成績を修めなくてはいけない。

名門のオックスフォード大学とケンブリッジ大学には予備コースがない。IBに対応する高校からでないと原則的に進学できない。

最後に学費について説明する。米国では日本円で年間300万~800万円、英国は200万~500万円。日本と比べると高い。

ただ、米国の私立大学の場合、奨学金は充実している。返済しなくてもよい給付型が中心となるため、応募してほしい。日本国内にも海外大学の進学を目指す生徒たちのために「ユニクロ 柳井正財団」や「笹川平和財団」などによる奨学金がある。

日本の教育も変わりつつあるが、米英などの大学では学生同士が議論をしながら授業が進む。私自身、米国の大学へ進学したが、課題を解決するために意見を飛ばし合いながら答えを導いていく、そんな授業を経験してきた。そのおかげか、仕事上で向き合う課題について瞬発的に解を探り出せるようになった。

また、学生たちの文化や人種、国籍は異なり、キャンパスでは世界との距離が近く感じた。高校生や保護者たちにはぜひ、視野を世界に広げて進む大学を選んでほしい。

 

 

松永みどりさん

松永みどりさん

まつなが・みどり アゴス・ジャパン留学指導部ディレクター。米国のリベラルアーツカレッジを卒業後、1994年から海外大学進学カウンセラーとして約30年間の指導に携わる。