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不動産裏付けのデジタル証券、金商法で規制 行政処分も 顧客に応じた勧誘求める

金融庁と国土交通省の両方が所管し、投資家への販売ルールなどであいまいな部分があった。投資家に販売・勧誘する規制を導入し、違反すれば事業者に行政処分を出せるようにする。

 

デジタル証券はブロックチェーン(分散型台帳)などの技術を活用し、電子的に発行されるもので、セキュリティー・トークンとも呼ばれる。米セキュリティー・トークン・マーケットによれば、世界のデジタル証券の時価総額は162億ドル。

デジタル証券の発行者は小口での資金調達が迅速にでき、投資家は小口投資が可能になる。裏付けとする資産は不動産に限らないが、市場が立ち上がったばかりの日本ではキャッシュフローが把握しやすい不動産を裏付けにしたデジタル証券の発行が相次ぎ、公募発行残高は200億円を超えた。

不動産を裏付けにしたデジタル証券は2本の法律で規定されている。日本では2020年4月施行の改正金融商品取引法で規定される一方、金商法とは別に不動産特定共同事業法(不特法)に基づいたデジタル証券の発行も可能だ。金商法は金融庁、不特法は国交省が所管している。

過去には不動産情報サイト大手LIFULL(ライフル)が不特法準拠のデジタル証券を試験発行した。金融業界からは「不特法のデジタル証券はシステム審査や業者の内部管理体制が金商法に比べて甘い」との指摘が挙がっていた。

金融庁は金商法を改正し、不動産の売買・賃貸で出資者に収益を分配する「不動産特定共同事業契約」に基づくデジタル証券について販売勧誘ルールを適用する。具体的には事業者に金融商品取引業の登録を義務付づけ、顧客の知識や経験に応じた商品販売を求める。不適切な勧誘をした場合は、業務改善命令や業務停止命令を出す可能性がある。

金融庁と不特法を管轄する国土交通省は21年から協議を続けて金商法を改正する準備が整った。金商法改正後は、既存の不特法の規制と併用する。政府が近く閣議決定する見通しだ。

不動産に小口投資できるデジタル証券が上場不動産投資信託(REIT)と違うのは、個別物件を購入して保有し続けられる点だ。デジタル証券は実際の不動産投資に近い感覚で投資できる上、3%強の利回りを得られる案件もあるため、人気の金融商品に育ちつつある。不動産を裏付けにしたデジタル証券発行に力を入れるケネディクスは同市場が30年に2兆5000億円にまで広がるとみる。

デジタル証券は発行後に売買できる流通市場の整備も始まっている。SBIホールディングス三井住友フィナンシャルグループなどが出資する私設取引システムの運営会社である大阪デジタルエクスチェンジ(東京・港)が23年11月をめどにデジタル証券の取り扱いを始める予定だ。金融商品としての性格が強まるのを機に金商法の網をかける狙いもある。

(フィンテックエディター 関口慶太、岩田夏実)