ドラマ「冬のソナタ」から始まった韓流ブームは日本では定着し、世界を席巻するまでになった。とくにポピュラー音楽やドラマ、映画などの映像コンテンツの成長には目を見張るものがある。そんな韓国のコンテンツ産業成長の理由を、本書は解き明かす。

日本では、民間企業が自助努力して一部の領域で海外での競争力を獲得している。これに対し韓国では政府の関わりが色濃い。政府の関与に関しては表現の自由の観点から懐疑的な見方もあるだろうが、プラス面も十分にあったと指摘する。コンテンツ全分野を一元管理するシステムには、縦割り行政の日本が参考にすべき点は多い。
映画やテレビドラマ、アニメなどの作品の舞台を訪れる観光行動をコンテンツツーリズムと呼ぶ。観光立国を目指す上でその視点は欠かせない。豊富な事例からは日本以上にドラマの聖地巡礼が活発な様子がうかがえる。政府はBTSやイカゲームなどを活用したメタバースでの観光開発にも取り組むそうだ。良質なコンテンツは観光行動を創出する。現象面を捉えるだけでなく、コンテンツ振興の延長線上に観光振興がある。
日本はコンテンツに関しては長い歴史があり、特有の美意識や表現力がある。韓国を学ぶことは日本の強みの再確認になる。(徳間書店・1870円)
コメントをお書きください