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シリコンバレー銀が破綻 米利上げ、金融システムに影 リーマン後で最大

テクノロジー関連のスタートアップとの取引で知られるシリコンバレーバンク(SVB)は10日、地元カリフォルニア州の金融当局により事業停止となり、米連邦預金保険公社(FDIC、総合2面きょうのことば)の管理下に入った。債券投資に傾斜し損失が膨らんだ。破綻規模はリーマン・ショックの2008年以降で最大、過去2番目となる。米国が金融緩和から急速な引き締めに急旋回し、金融システムにきしみが生じている。(関連記事総合2面に

SVBの2022年末時点の総資産は約2090億ドル(約28兆円)で全米16位。08年9月に破綻し、米銀で過去最大の破綻となったワシントン・ミューチュアル(総資産3070億ドル)以来の規模となる。拡大した債券運用を金利上昇が直撃した。資本不足に陥って取り付け騒ぎに発展した。

償還までの期限が長い住宅ローン担保証券(MBS)や米国債など有価証券投資の規模は22年末時点で預金量の70%弱を占め、3年前に比べて20ポイントあまり上昇していた。

預金減に対応する資金を捻出するため、210億ドルの債券を投げ売りし、売却損の発生で一段と資本が毀損することが8日の発表で明らかになると信用不安が高まった。スタートアップ企業の預金引き揚げが加速、資金繰りは行き詰まった。

流動性や金利リスクの管理のまずさというSVB固有の事情が破綻の主因とみられる。ただ、金利上昇がもたらす債券運用への逆風はほかの金融機関にも共通する。

FDICの集計では預金保険の対象である米銀が抱える含み損は22年末時点で計6200億ドルに及ぶ。米連邦準備理事会(FRB)は10日、米国に拠点を置く銀行に対し緊急調査に入った。

08年のリーマン・ショック当時は、リスクの見えにくい証券化商品が金融業界に広がり、住宅バブルが崩壊すると信用収縮に陥った。金利環境の変化が出発点となった今回は当時と構図が異なるが、リスクが過小評価されていた点では似通う。

米調査会社モーニングスターのエリック・コンプトン氏は「SVBの破綻は、金融システム全体に波及する可能性は小さい独自の危機」と指摘する。一方で「リスクがいつ顕在化するかを予測することが非常に困難だということを明白に示した」と警鐘を鳴らす。