創業10年を迎えたメルカリは国内にフリマアプリを根付かせた。米国は苦戦が続くが、欧州やアジアへの進出も視野に入れている。デジタル化が加速する社会でメルカリをどう進化させるか。山田進太郎最高経営責任者(CEO)に今後の成長戦略を聞いた。
――国内でフリマアプリを根付かせました。次に目指すステージは。
「日本のインターネットサービスをけん引してきたヤフーや楽天グループ、LINEの規模を考えれば、月間利用者を数千万人の後半まで十分伸ばせる可能性がある。そこを目指していく。国内はまだ2000万人超だが、少なくとも4000万人弱が出品してみたいと考えているとの統計もある」
「メルカリの強みは、テクノロジーで個人同士のマッチングをなめらかにできるところにある。『簡単さ』を磨き込むことで利用者は増えていく。コアの顧客はこれからも個人だが、法人にもひろげていきたい。循環型の社会で必要不可欠な存在になりたい」
撤退は考えず
――米国事業は苦戦が続いています。
「大きな赤字が出ている一方、大きなチャンスもある。国内総生産(GDP)は世界一で中古品の市場規模は約5倍ある。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要で大きく伸びた反動などはあっても、中長期でみれば中古市場は数倍に伸びる。米国事業は国内を上回る水準に成長する余地がある。撤退が正解とは思っていない」
「米国の消費者にまだ自分たちの実力を見せ切れていない。サービスやマーケティングがまだ完全に対応できていない。今の月間利用者は約500万人だが投資家は1000万~2000万人を期待している。簡単に安く買えるという魅力を打ち出していく」
欧州・アジア開拓
――米国が不振のなか、新たな国や地域への進出を不安視する声もあります。

「国内よりグローバルの伸びしろは大きい。私自身もなるべく海外展開に時間を使いたいと思っている。欧州やアジアにも可能性はあり、しっかりと開拓していきたい。2022年はフランスのフリマアプリ運営会社に約2億円出資した。これまで10弱の企業と出資やM&A(合併・買収)の話をしてきた。急に動く可能性もある」
――時価総額はピーク時から6割減。市場の評価をどう受け止めていますか。
「株価が下がっているから赤字事業をすぐにやめるという判断よりは、中長期的な視点でやるべきことをやっていく。そうすれば収益力もついてきて右肩上がりになると信じている。上場した18年と比較すると相当な地力がついた。国内フリマ、メルペイ、米国フリマの3本柱は着実に成長してきたし、組織も人もかなり強くなった」
――創業10年を機にミッションを見直しました。
「世界的なマーケットプレイスをつくるだけでなく、人の可能性を広げる存在でありたいと考えた。目標を示すために大風呂敷を広げた」
――メタバースや暗号資産(仮想通貨)など新しいテクノロジーにどう対応しますか。
「リアルなモノだけでなく、アバターや非代替性トークン(NFT)も個人同士でやり取りする社会になっていく。そうなった世界で一定のポジションを築きたい。デジタルアイテムを含めてメルカリで取り扱っていく必要がある。たとえばメルカリの売上金を持っている何百万人の利用者が仮想通貨をすぐに買えるようになれば、仮想通貨の民主化が起きる。可能性を見極めながら挑戦を続けていきたい」
河端里咲、佐藤諒が担当しました。
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