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デジタル教科書、24年度導入 学習端末活用に地域差 中教審報告 優れた指導例周知必要

中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の分科会は8日、2024年度から小中学校の英語でデジタル教科書を先行導入するとの報告をまとめた。デジタル化により板書中心の一斉授業から転換する狙いがあるが、要となる学習用端末の使用状況は地域差が大きい。デジタル教科書の機能を生かすには教員の実践力の向上が欠かせない。

 

デジタル教科書の導入方針は中教審の作業部会が22年8月に方向性を示し、8日の初等中等教育分科会で正式に報告された。分科会長代理の堀田龍也・東北大教授は「子どもたちが自分で様々な情報にあたり、議論する授業の形を実現するための基盤整理だ」と強調した。

報告によるとデジタル教科書は小5~中3の英語で導入し、算数・数学などへ段階的に広げる。英語は既に多くの公立小中が試験的に使い、音声機能による学習効果の評価が高い。紙の教科書と同様に国が無償で提供し、当面は紙とデジタルを併用する。

導入の狙いは一人ひとりの習熟度に応じた学びへの転換だ。例えば英語の音声機能は聞きたい発音を確認でき、進捗に合わせた復習・予習に生かせる。障害がある児童生徒の場合、画面の色や明るさの調整、文字の拡大や強調といった機能が役立つ。

児童生徒に1台ずつ学習用端末を配る「GIGAスクール構想」により、デジタル教科書を操作する端末の配備はおおむね完了した。今は紙の教科書を中心としながら、インターネットでの調べ学習や資料作成に使う学校が多い。学習端末は授業のデジタル転換で中心となるツールだ。

しかし現在の活用状況は地域差がある。22年の文科省の調査によると、端末を「ほぼ毎日使う」と答えた小学校の割合は東京都や山口県などで7割を超えた一方、岩手や島根など6県は2~3割台にとどまる。

全国では「月1回未満」しか使わない学校も約40校あった。24年度から本格導入されるデジタル教科書の活用法もばらつきが生じる可能性がある。文科省幹部は「教育委員会や校長の方針の影響が大きい。デジタル化の必要性についての理解をどう広げるかが地域差解消に向けた焦点になる」とみる。

同省が活用推進策の柱に据えるのは、各地域で学校のICT化の司令塔となる「GIGAスクール運営支援センター」の整備だ。センターは民間が運営し、端末の故障といったハード面の対応だけでなく、教員研修や民間専門人材の派遣などの支援も行う。自治体の整備を後押しするため22年度2次補正予算に71億円を計上した。

学校現場ではデジタル教科書を使った授業形式に慣れる必要がある。活用が進む学校では教員主導だった授業の進め方が変わり、児童が主体的に学ぶ時間が増えたという例もある。国や自治体が優れた指導例を周知し、実践を促す取り組みも求められる。

(橋爪洸我)