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スシロー、海外に活路 今期の出店国内上回る 値上げで苦戦も株価戻る

価格を据え置いた同業他社に顧客が流れている格好だ。「おとり広告」の不祥事などの問題も足を引っ張っている。また、魚介類を中心とした原材料価格の高騰などで国内の事業環境は厳しい。F&LCは海外での出店に力を入れつつあり、投資家の関心も海外事業の成否に移りつつある。

 

「(1皿税抜き)100円という呪縛を自分たちで外す判断をした」。スシローでの値上げを前にF&LCの水留浩一社長はこのように語っていた。ただ、郊外店で最低価格を1皿110円(税込み)から120円(同)へ引き上げるなどした22年10月以降、既存店の客数は前年同月比で減少が続く。22年6月に景品表示法違反(おとり広告)による措置命令を受けた不祥事で客足は遠のき始めていたが、値上げで拍車がかかり同年12月には27%も減少した。

国内でスシローを約650店運営するF&LCは業界最大手。新型コロナウイルス禍の中でも21年9月期に連結純利益(国際会計基準)で131億円(20年9月期比約2倍)と過去最高益をあげていた。それだけに足元での販売不振が目立つ。

スシローが値上げに踏み切ったのは、水産物の仕入れ価格が高騰するなどして収益を圧迫しているためだ。F&LCの売上高営業利益率は22年9月期で3.6%と21年9月期比5.9ポイント悪化している。

こうした状況を投資家はどうみているのか。F&LCの7日の株価終値は3560円。国内での客数が減少しているにもかかわらず、株価は不祥事が相次いだ22年夏を底に回復傾向にある。「今後の海外展開への期待」(国内アナリスト)からだ。

F&LCは中国など海外での事業を強化中で、出店ペースを速めている。23年9月期の1年間の出店数は初めて海外が国内を上回る。24年9月期を最終年度とする中期経営計画では、海外の店舗数を200店規模と現在の約2倍にする計画だ。

スシローは1店舗あたりの売り上げが同業他社に比べて高く、需要予測に人工知能(AI)を活用するなど効率的な店舗運営も評価を得ている。「アルバイトのシフト管理や食材の管理など、コストコントロールの力は高く評価できる」(大和証券の五十嵐竣アナリスト)との指摘もある。

事実、F&LCのスシロー事業では国内より海外の稼ぐ力が強まっている。F&LCの22年9月期のセグメント別利益率をみると海外は5.7%で国内の4%よりも高い。五十嵐アナリストは「25年9月期には海外のスシロー事業の利益額が国内を上回る」とみている。

(張耀宇)