搭載していた観測衛星「だいち3号」は災害時の被災状況の把握などに使う想定だった。姉妹機もH3の2号機での打ち上げを予定する。現在運用中の「だいち2号」はすでに設計寿命を超えている。H3の飛行再開が遅れれば、国の災害観測体制に影響が出かねない。
だいち3号の開発費は約280億円。三菱電機が設計や製造を担った。太陽光の反射で地上を観測する光学センサーを備えている。地上の物体の識別能力が高く、計測できる最も小さな値を示す「分解能」は白黒画像で80センチメートルと初代の2.5メートルから大幅に向上した。災害時には建物倒壊や道路寸断などの被災状況を詳細に確認するはずだった。農業や漁業での利用も見込んでいた。
文部科学省の原克彦審議官は7日の記者会見で「(だいち3号について)再開発の要否を含めて関係府省、民間企業と検討することが必要だ。今後どうするかは相談の中で考える」と述べるにとどめた。
「だいち」は日本の災害対策を支える衛星シリーズだ。2011年に運用を終えた初代「だいち」は、11年3月の東日本大震災で津波被害の把握や救援チームが沿岸部へ移動するための経路調査などに貢献した。だいち3号は初代だいちの後継機という位置づけで、打ち上げの約半年後から活動する予定だった。
夜や悪天候でも観測できるレーダーセンサーも備えるだいち2号は、14年から運用中だが、すでに想定寿命を超えている。そのためJAXAは22年度中にだいち3号をH3初号機、23年度にレーダー型の「だいち4号」をH3・2号機で打ち上げる計画を立てていた。今回の失敗でだいち3号が失われたばかりか、H3の打ち上げ再開が遅れれば、だいち4号の打ち上げのメドも立たない。
だいち4号に関して、文科省の原審議官は「今回の事態を受け、ロケット側の失敗の要因分析を踏まえて、今後の打ち上げスケジュールを検討する」と話した。H3初号機の原因究明と対策には年単位の時間がかかるとの見方も出ている。打ち上げ時期が遅れれば遅れるほど、災害大国日本の備えに隙が生まれるリスクが高まる。
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