
三越伊勢丹HDや高島屋は13日から顧客のマスク着用を任意とする(東京都中央区、高島屋日本橋店)
企業がマスク着用ルールの緩和に向けて対応策を相次いで打ち出している。小売りやサービスなどでは利用客には個人の判断に委ねるとし「脱マスク」に踏みきる一方で、従業員にはマスク着用を求め続ける。政府が新型コロナウイルスへの対応の出口戦略を明らかにしつつあるなか、経済活動の正常化に向けた取り組みが一段と進みそうだ。
新型コロナの感染症法上の分類の「5類」への移行を見据え、13日から政府方針で屋外だけでなく屋内でもマスク着用が個人の判断に委ねられる。小売りやサービスなど接客を手掛ける企業の多くが13日以降、利用客のマスク着用については任意とする方針だ。セブン―イレブン・ジャパンなど従業員のマスク着用は継続する企業が多い。従業員の感染防止の観点に加え、店舗運営などの事業継続を重視していることが大きい。
JR東日本は7日、乗車時のマスク着用を呼びかけてきた案内放送を在来線・新幹線ともに13日から実施しないと発表した。新幹線や在来線特急で自粛を求めてきた座席回転による向かい合わせでの着席も認めるようにする。駅員や乗務員はマスク着用を当面継続する。
コンサートや演劇などの会場となる全国の公共劇場では当面、観客にマスク着用を義務ではない範囲で「お願い」する公演が多くなりそうだ。新国立劇場(東京・渋谷)や東京芸術劇場(同・豊島)などが加入する全国公立文化施設協会は13日に合わせて新型コロナ対策のガイドラインを改定する予定。同協会の岸正人事務局長は「マスクを着けない人が隣にいることに、不安を覚える観客にも配慮したい」と話す。
一部には従業員のマスク着用も任意とする企業もある。カラオケ店「ビッグエコー」を運営する第一興商は13日以降、「従業員、利用者いずれもマスクの着用は個人の判断に委ねる」とした。政府方針にあわせる考えだ。居酒屋「金の蔵」などを運営するSANKO MARKETING FOODSもマスク着用が任意になったタイミングで、店舗のホールスタッフはマスクをせずに働くことを推奨することとした。同社は「顔を見せた接客を重視したい」と理由を明かす。
キャリア・転職支援のライボ(東京・渋谷)の「Job総研」が2月に社会人を対象にマスク着用について調査したところ、個人の判断に委ねられた後も27.8%が「無条件で着用する」と回答した。感染対策や習慣化していることが主な理由だ。「状況に関係なく着用しない」は5.5%にとどまり、マスクがしばらく手放せない可能性もある。
アジアでマスク着用ルールの撤廃で先行する地域でも同様の傾向がある。台湾では2月20日から屋内でのマスク着用義務を順次撤廃し、個人判断に切り替えた。
昨年12月に屋外での着用義務をなくしたのに続き、ほとんどの場所で「マスクなし」が可能になった。ただ、台北市内のオフィスや商業施設では、大部分の人が感染予防などのため着用を継続している。
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