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コロナ後のオフィス、交流拠点が競争軸 ミッドタウン八重洲、10日開業 企業間の連携促す

。国内外から来街者を呼び込む商業施設やバスターミナルを設置。さらに広いフロアを生かし、企業間連携を促すビジネス交流拠点も設ける。将来、自社ビルに入居する企業の育成を自ら支援する狙い。新型コロナウイルス下でオフィスのあり方が問われる中、新たな競争軸となる。

 

「国際競争力と地域創生を車の両輪のように進めていきたい」。菰田正信社長は7日の説明会でこう述べた。東京ミッドタウン八重洲を皮切りに八重洲口側で大規模再開発が相次ぐなか、街全体の価値を高める重要性を強調した。

新施設は三井不が新型コロナウイルス禍後を見据えた初めての大型オフィスビルだ。オフィスの1フロアは、約4千平方メートルと東京駅周辺で最大級の広さ。ビルの出入り口やオフィスのドアに顔認証システムを導入し、エレベーターには非接触ボタンを用意した。

働き方が多様化するなか、入居企業向けのフィットネスジムやラウンジに加え、シェアオフィスも備えた。商業施設には多様な飲食や物販を計57店舗そろえ、施設全体で年約1千万人の来街者を想定する。

もう一つの特徴がビジネス交流拠点だ。三井不は創業の地である日本橋でライフサイエンスや宇宙分野を対象に会員組織やビジネス拠点を設けてきた。八重洲では地方と都内の企業などをつなげ、新たな商品や事業戦略を促進する。約500平方メートルの交流ラウンジを設け、情報発信を行う展示空間やイベントスペースも用意する。日本橋にも近い地の利を生かして一体的に企業集積を促す。

三井不の菰田氏はミッドタウン八重洲のオフィスビルについて「既に満床だ」と明らかにした。ただ23年以降、大規模な新規ビルの供給が都内で相次ぐ。東急不動産がJR渋谷駅近くで大規模再開発を進め、住友不動産も東京・三田で大規模ビルを建設。JR東日本は25年度までに高輪ゲートウェイ駅周辺で第1期の再開発を見込む。

不動産業界では「オフィス需要は新型コロナ前に戻らないなか、23年以降の大量供給でオフィス市況の悪化懸念は拭えない」(オフィス仲介大手、三幸エステートの今関豊和チーフアナリスト)との見方が多い。今ある企業を新しいビルに誘致するだけでは、今後、オフィス市場全体では空室の増加が避けられない。

森ビルも今秋に開業予定の「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」の最上部に情報発信拠点を設置。近隣の虎ノ門ヒルズ内に持つ交流拠点と連動させるなど相乗効果を狙う。菰田氏は「八重洲や日本橋での再開発が進めばエリアの一体性が増す」として、周辺の国際競争力が高まると期待する。いかに他社と差異化した取り組みを展開して優位性を発揮できるかが焦点となる。

(原欣宏)