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10日 ミッドタウン八重洲が全面開業 続く再開発、都市競争のカギ

新型コロナウイルス禍後をみすえた初めての大型オフィスビルで、高級ホテルや地方都市を結ぶバスターミナルを設置し、国内外からビジネス客や観光客を呼び込む。今後も八重洲口を中心に東京駅周辺では大型再開発が続き、首都のにぎわいや国際競争力を高めそうだ。

新施設は六本木と日比谷に続き、複合施設「東京ミッドタウン」として3カ所目となる。街区の中心は地上45階建て、高さ約240メートルの「八重洲セントラルタワー」。オフィスは7~38階部分で、1フロア約4千平方メートルと東京駅周辺で最大級の広さだ。

すでに三井化学ダイキン工業、住友生命保険などの入居が決まっており、三井不動産は「全面開業までに全フロアの内定企業が決まる見込み」(富樫烈常務執行役員)としている。

中央区がまとめ役となり、複合施設の企画を練り始めたのは2000年代初めだ。18年に着工し、20年にコロナ禍を受けると設計を機動的に見直していった。「接触しなくても機能する設備を入れる」(菰田正信社長)方針のもと、ビルの出入り口やオフィスのドアに顔認証システムを導入した。エレベーターなどには非接触ボタンを用意した。

利用者の安全性や利便性の向上へ、様々な非接触アイテムを標準搭載している。周辺の飲食店から注文した商品を運ぶデリバリーロボットなども活用する。

オフィスビルに対するニーズはコロナ禍を経て多様になった。新施設は高層階に入居企業向けのフィットネススペースやラウンジを備え、シェアオフィスも設ける。出社したくなる工夫を凝らし、働き方に応じた場所や過ごし方の選択肢を提供する。様々な企業との交流も促し、事業創出や課題解決につながる効果も打ち出す。

オフィス関連以外では商業施設や小学校、6つの乗降用バースを備えたバスターミナルを整備し、一部は昨秋に先行開業している。4月には日本初進出となる「ブルガリホテル東京」が開業する予定だ。得意とする複数の用途を持つ「ミクストユース」型の街づくりが、日本の玄関口ともいえる東京駅八重洲口近くで進む。

ただ、八重洲エリアの再開発プロジェクトは始まったばかりだ。東京ミッドタウン八重洲は大型再開発案件の第1弾に当たり、八重洲通りを挟んだ隣接地では東京建物がオフィスや医療施設などで構成する超高層ビルを建設する。高さ約250メートルのビルなどを25年度に完成させる計画だ。

さらに近隣では三井不や住友不動産ヒューリックなど6社も再開発を進める。対象面積は約2万平方メートルで、地上43階建ての超高層ビルを建設する。オフィスや飲食店に加え、劇場やインターナショナルスクール、サービス付きアパートメントをつくる計画だ。

28年度の完成予定で、エリア全体が整備されれば地下バス停の乗り場の数は20とJR新宿駅直結のバスタ新宿を上回る。1日1500便以上のバスが発着可能といい、人の流れが一段と増しそうだ。

東京駅の周辺では、三菱地所が大手町で28年に、約390メートルで高さ日本一となる「トーチタワー」を開業する予定だ。日本橋や有楽町、京橋など近隣エリアでも再開発が相次ぐ。

都心のオフィス市況は大量供給や働き方の変化を背景に不透明感が拭えない。一方で、訪日客を中心に東京を訪れる人の増加は見込まれる。相次ぐ再開発は一施設にとどまらず、街全体のにぎわいを生み出し、東京が世界の主要都市に肩を並べる国際競争力を保てるか占う意味を持つ。

(原欣宏)