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高級車価格、10年で2.8倍 富裕層が投資 「高額品指数」ワイン超す上昇率

主要な高額品の価格指数をみると自動車は直近10年間で2.85倍となり、2022年の上昇率は25%と急速に伸びている。百貨店の外商での取り扱いも始まっている。富裕層が車を資産形成のひとつと捉えているとみられ、新たな投資対象として存在感を高めている。

英不動産大手ナイト・フランクが1日にまとめた高額品の価格動向を示す2022年末時点の「ラグジュアリー指数」の上昇率は、2012年末に比べ自動車が主要10品目中2位だった。首位の希少ウイスキーは4.73倍と突出するが、自動車は急上昇を続け追い上げている。直近1年間の同指数の上昇率は25%で、美術品などのアートの29%に次ぐ2位となり、希少ウイスキーやワインを上回る。

東海地方に住む40代の自営業の男性は22年、90年代に人気を博したホンダ「NSX」を「これからも値段が上がる」とみて購入した。40代の会社役員男性もトヨタ自動車の「スープラ」を中古で購入した。「値段がさらに上がるまで持ち続ける」という。相場を先読みする投資目的の購入者が確実に増えている。

これまでも高級車は欧米の富裕層中心に金などと同様に実物投資の対象となっていたが、ここ数年で急速に人気が高まった。新型コロナウイルスの感染拡大で富裕層の購買意欲が海外旅行などから商品に向いたためだ。

米ゴールドマン・サックスは22年夏のリポートで「インフレ下ではクラシックカーなどの実物資産が購買力維持の役割を果たしている」と指摘する。

特に中古の高級車の価格上昇に拍車がかかる。独ポルシェや伊フェラーリなどの超高級車の相場は高騰している。英調査会社のヒストリック・オートモービル・グループ・インターナショナル(HAGI)が算出した高級車の価格指数を見ると、23年1月にポルシェは前年同月に比べて4%、3年前に比べると32%上昇した。フェラーリは同18%、同36%上がった。

ポルシェなどの超高級車に加えて、近年ではホンダ「NSX」や日産「スカイラインGT-R」、トヨタのスープラなど90年代のスポーツ車の引き合いも高まっている。

プロトコーポレーションが運営する中古車情報サイト「グーネット」をみると、93年発売のスープラのA80は329万~2450万円(新車は290万~472万円)など、新車の5倍超に上がる車種もある。90年発売のNSXは638万~2500万円(新車価格は800万~860万円)、89年発売のスカイラインGT-RのR32型は438万~2100万円(新車は445万円)なども高騰している。

百貨店も高級車を商材として注目する。松坂屋名古屋店(名古屋市)は外商を通じて高級輸入中古車の取り扱いを始めた。松坂屋と組んだ輸入車販売のアペルタ名古屋(愛知県清須市)の担当者は「値上がりするかどうかを聞かれることもある。金融資産に近い性質のものとして購入を検討する人もいるとみられる」と話す。

東京都内の旧車専門店の担当者は「車ファンの購入が主体だったのが、生産終了の人気車の希少性と価格高騰の度合いを計算し、不動産同様の感覚で買っている」と説明。一定の投資市場が形成されてきたという見方が強く、高水準の取引はしばらく続く見込みだ。

一方、足元では新車供給が徐々に回復し、コロナ禍の渡航規制の緩和などで富裕層の目が再び海外旅行などにも向いている。過熱気味だった車両価格高騰には一服感も見られる。

(白井咲貴)