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地銀初のステーブルコイン、企業間の国際決済に商機 手数料引き下げ可能に

モバイル専業銀行であるみんなの銀行や東京きらぼしフィナンシャルグループ、四国銀行は円などの法定通貨と価値が連動するステーブルコインを2023年にも発行する。個人間の決済は無料送金が広がりつつあり、手数料収入が期待できない。地銀3グループはステーブルコインを使って、市場規模が大きい企業間の決済需要を取り込みたい思惑がある。

ブロックチェーン(分散型台帳)開発のG.U.テクノロジーズ(東京・渋谷)が2日、地銀3グループとステーブルコイン発行の実証実験を始めたと発表した。

ステーブルコインとは法定通貨などの担保により価格が大きく変動しないよう設計された決済手段。日本では22年に海外に先駆け規制法が成立、23年夏にも施行される。

G.U.テクノロジーズなどが開発するブロックチェーン「ジャパンオープンチェーン」で預金を裏付けにした円建てのステーブルコインを発行する。個人間や、企業間などで送金がうまくいくかを検証する。

3グループとも現在は公正取引委員会から手数料の高さを指摘されてきた「全国銀行データ通信システム」を使い、個人や企業振り込みを処理している。ステーブルコインはこのシステムを通さないため、決済手数料の大幅引き下げも可能だ。

メガバンクなどが参加する個人間の少額送金システム「ことら」は10万円までの送金を無料にしており、競争を通じて個人の決済・送金から得られる手数料プールは圧縮を余儀なくされそうだ。だが、今回ステーブルコインを発行する地銀には他の分野でカバーできるとの思惑がある。その一つが企業間決済だ。

経済産業省の推計によれば、企業間決済市場は1000兆円前後と、企業・個人間取引市場の3倍強。ステーブルコインはまず円建てで発行するが、米ドルやユーロ建ての発行も可能。多国籍企業間の決済などで利用できれば、決済手数料を獲得しやすくなる。

メガバンクはまだ独自のデジタル通貨やステーブルコイン発行には踏み切れていない。ふくおかフィナンシャルグループはみんなの銀行、東京きらぼしFGはUI銀行という傘下に抱えるデジタル銀行を武器に独自色を発揮したい考えだ。

(フィンテックエディター 関口慶太)