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三菱地所、REITなど受託資産倍増へ 30年度末に

金融引き締めで欧米の一部の投資意欲が減退するなか、安定収益が期待できる不動産などオルタナティブ(代替)投資の需要は根強い。物流施設やデータセンターなど付加価値の高い物件に投資する運用商品を増やし投資家を掘り起こす。

投資マネジメント事業は国内外の機関投資家などに対し、上場不動産投資信託(REIT)や私募REIT、私募ファンドといった運用商品を提供している。投資家の資金を元手に物件を取得し、改装するなど価値を高めるように運用し、手数料を得る形だ。

受託資産の拡大に向けて各地域のネットワークを生かす。同社は国内で00年に設立したジャパンリアルエステイトアセットマネジメントと三菱地所投資顧問を傘下に抱える。海外では10年に英国のヨーロッパキャピタルを子会社化し、米国のTAリアルティも買収した。アジアでは19年にCLSAリアルエステートを傘下に入れている。

重要と位置づけるのが米国市場だ。今後も好立地の既存物件を取得して運用しつつ、リノベーションで物件価値を高める「バリューアッド」型も取り入れて資金需要を掘り起こす。米国でデータセンター事業にも参入し、東京センチュリーと共同出資でセンターを建設している。データセンター専用の私募REITも立ち上げる方針だ。

アジアでは22年11月、運用期限がない「オープンエンド型」の私募ファンドの運用を始めた。オーストラリアやシンガポール、日本などで好立地のオフィスビルや商業施設、住宅などを幅広く取得し、投資家の資金を集める。

投資家から集めた受託資産残高は22年9月末時点で5兆5000億円となり、当初の計画から3年ほど前倒しで目標の5兆円を超えた。22年度の同事業の営業利益は100億円と、19年度比2倍以上に増える見通しだ。30年度には受託資産残高で10兆円、営業利益で300億円をめざす。

三菱地所は利益の柱に育てつつ、三菱地所は投資マネジメント市場で世界大手の一角に入ることをめざす。米調査会社IREIによると、21年12月末時点で受託資産残高の世界首位は米ブラックストーンだった。カナダの投資ファンド、ブルックフィールド・アセット・マネジメントなどが続き、欧米の企業が上位を占める。

三菱地所が30年度末までに10兆円まで増えれば、現状の順位では単純計算で10位近くに入る形だ。稲川純路・投資マネジメント事業部長は「事業成長や利益貢献を進めつつ、投資マネジメント分野でグローバルトッププレーヤーの一角の地位を確立したい」としている。