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似鳥昭雄さん78歳 若さの秘訣は「使命感・遊び・歌手」 人生100年の羅針盤

似鳥会長の履歴書はまだ埋まっていない。

大事なのは「ロマンとビジョン」

――仕事に遊びと相変わらず精力的ですね。若さを保つ秘訣は。

「ロマンとビジョンですよ。日本の暮らしを豊かにすることが自分の使命。これを実現するために店数を増やしていきます。創業以来、50年以上同じ気持ちを持ち続けていることに尽きます。今は1000店近くに達し、米国の2〜3倍高かった家具も今や安いぐらいだし、品質でも負けていません」

「仕事はびっしり入っていますが、先日は政財界のトップが一堂に会した会合を開いて、今は3枚目のCDを制作中です。時間がないからやれないのではなく、やるためにどうするかですから」

――ゴルフも熱心です。

「月に10回はやっていますからね。昨年は120回ぐらいやったかな。(チェーンストア経営の師匠である)渥美俊一先生(故人)からは『ゴルフなんかやっていたら目標なんて実現できないよ』などと言われました。ちなみに(今のニトリのように)小売業が工場を持つことも反対されていました。しかし工場は今や世界トップレベルで先生も生前は『見学させてくれ』と認めてくれました」

「ロマンとビジョンを実現するには健康じゃないと前向きになれません。ゴルフはうまくなったと悟った瞬間に混迷してしまう。色々あるけど健康にいいし、常に変化するから面白い。でもちょっとやり過ぎかな。プレー後に反省しますが、止まらないというか(笑)」

ゴルフが飛ばなくなった… 奮起して週3回の筋トレ開始

――若い頃にやれば良かったことや後悔なんてないでしょう。

「後悔ばかりですよ。最近では同業のM&A(合併・買収)。全役員から反対されて断念したけど、やるべきだったかな。実はプロ野球チームの買収話もありましたが、これも猛反対を受けて。ほかにもホテルチェーンとか、やっていたら天才と言われたはず(笑)」

創業間もないころ(ニトリホールディングス提供)

――老いは感じますか。

「感じますね。やはりゴルフが飛ばなくなったこと。かつてはドライバーで230〜240ヤードは飛んだけど、今は180ヤードぐらい。それと数年前に妻に『あばら骨が見えているようじゃだめね』と言われたのがショックで。奮起しましたよ。週に3回、筋トレを続けたら、筋骨隆々とはいかないまでも50代ぐらいの筋力に戻りました。背筋が増したせいか、服がMサイズからLサイズになりました」

――今後の人生のビジョンは。

「とにかく(年間売上高3兆円・3千店が目標の)第2次中長期経営計画が終わる2032年までは健康体を維持して目標を実現しないと。そこから先はまだ何も考えてません。100歳までは生きようとは思っていますが」

衰えぬサービス精神 夢見る青年のよう

似鳥昭雄会長の取材を始めたのは筆者が札幌支社に勤務していた2002年からで、20年過ぎた。ロマンとビジョンといういささか時代がかった言い回し、冗談や失敗談をふんだんに盛り込むトークも当時から変わらない。宴会で相手を喜ばせようというサービス精神もそのままで、80歳近くになっても夢見る青年のようだ。
「尊敬する人は?」と聞くと、京セラの創業者で日本航空(JAL)の再建に尽力した稲盛和夫氏の名前を挙げた。理由は「80歳近くで日本のためにJALの会長を引き受けたこと」。生真面目さと破天荒さが絡み合う独特の存在感で、ニトリの成長と地元北海道の活性化を生涯にわたり、けん引していくのだろう。

(編集委員 中村直文)

にとり・あきお 1944年樺太生まれ。66年北海学園大学経済学部を卒業し、67年に似鳥家具店を札幌で創業。72年似鳥家具卸センターを設立。86年社名を現在のニトリに変更。2003年に100店・1000億円を突破し、22年2月期で連結売上高は8000億円、店舗数は800を超え、35期連続の増収増益を達成した。