似鳥会長の履歴書はまだ埋まっていない。
大事なのは「ロマンとビジョン」
――仕事に遊びと相変わらず精力的ですね。若さを保つ秘訣は。
「ロマンとビジョンですよ。日本の暮らしを豊かにすることが自分の使命。これを実現するために店数を増やしていきます。創業以来、50年以上同じ気持ちを持ち続けていることに尽きます。今は1000店近くに達し、米国の2〜3倍高かった家具も今や安いぐらいだし、品質でも負けていません」
「仕事はびっしり入っていますが、先日は政財界のトップが一堂に会した会合を開いて、今は3枚目のCDを制作中です。時間がないからやれないのではなく、やるためにどうするかですから」
――ゴルフも熱心です。
「月に10回はやっていますからね。昨年は120回ぐらいやったかな。(チェーンストア経営の師匠である)渥美俊一先生(故人)からは『ゴルフなんかやっていたら目標なんて実現できないよ』などと言われました。ちなみに(今のニトリのように)小売業が工場を持つことも反対されていました。しかし工場は今や世界トップレベルで先生も生前は『見学させてくれ』と認めてくれました」
「ロマンとビジョンを実現するには健康じゃないと前向きになれません。ゴルフはうまくなったと悟った瞬間に混迷してしまう。色々あるけど健康にいいし、常に変化するから面白い。でもちょっとやり過ぎかな。プレー後に反省しますが、止まらないというか(笑)」
ゴルフが飛ばなくなった… 奮起して週3回の筋トレ開始
――若い頃にやれば良かったことや後悔なんてないでしょう。
「後悔ばかりですよ。最近では同業のM&A(合併・買収)。全役員から反対されて断念したけど、やるべきだったかな。実はプロ野球チームの買収話もありましたが、これも猛反対を受けて。ほかにもホテルチェーンとか、やっていたら天才と言われたはず(笑)」

――老いは感じますか。
「感じますね。やはりゴルフが飛ばなくなったこと。かつてはドライバーで230〜240ヤードは飛んだけど、今は180ヤードぐらい。それと数年前に妻に『あばら骨が見えているようじゃだめね』と言われたのがショックで。奮起しましたよ。週に3回、筋トレを続けたら、筋骨隆々とはいかないまでも50代ぐらいの筋力に戻りました。背筋が増したせいか、服がMサイズからLサイズになりました」
――今後の人生のビジョンは。
「とにかく(年間売上高3兆円・3千店が目標の)第2次中長期経営計画が終わる2032年までは健康体を維持して目標を実現しないと。そこから先はまだ何も考えてません。100歳までは生きようとは思っていますが」
衰えぬサービス精神 夢見る青年のよう
「尊敬する人は?」と聞くと、京セラの創業者で日本航空(JAL)の再建に尽力した稲盛和夫氏の名前を挙げた。理由は「80歳近くで日本のためにJALの会長を引き受けたこと」。生真面目さと破天荒さが絡み合う独特の存在感で、ニトリの成長と地元北海道の活性化を生涯にわたり、けん引していくのだろう。
(編集委員 中村直文)
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