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老朽マンション、大規模修繕で減税 積立金確保など条件 人生100年の羅針盤

自分が年老いていくのと同じように、若いころに購入したマンションも年々老朽化していく。2023年度の税制改正大綱では、各地で老朽化が問題となっているマンションに対する新たな特例措置が盛り込まれた。外壁の補修など一定の条件を満たし、寿命の長い建物にしようと大規模修繕工事をした場合、建物の固定資産税を減額する。自分のマンションが当てはまるかどうかをしっかりと確かめる必要がある。

新たな制度では、23年度から24年度の間に屋根や床の防水工事や外壁塗装など、マンションの大規模修繕工事(長寿命化工事)が完了した場合、翌年度の100平方メートル分までの建物部分の固定資産税を減額する。減額の割合は6分の1〜2分の1の範囲内。減税の割合については今後、市町村の条例で定める。

大規模修繕工事を支援する、スマート修繕(東京・渋谷)社長の豊田賢治郎さんによると、築20年以上たったマンションの場合、1戸あたりの固定資産税は10万円前後のところが多いという。今回の特例措置を当てはめると、1戸あたりの減税額は数万円ほど。仮に1戸3万円減税されるとすると、1棟50戸のマンションなら全体で150万円の減税となる。

ただ、減税措置を受けるにはいくつか条件がある。①築20年以上経過している10戸以上のマンション②長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施している③マンションの「管理計画の認定」を受けるなどして工事に必要な積立金を確保している――を満たす必要がある。

マンションの管理計画認定制度は22年4月から始まった、自治体がマンションの管理計画が適切かどうかを認定する仕組みだ。管理組合が自治体に申請すると、管理状況などを審査し、基準に適合すると判断されれば認定を得られる。

ただ、制度を導入している自治体はまだ少ない。現在、制度の運用を開始している自治体は東京都内だと板橋区や台東区、八王子市、小金井市、府中市など一部にとどまる。まずは自分が住んでいる自治体が制度を導入しているのか、今後に導入予定があるのかを調べることが重要だ。

認定を受けるには、国が定めた基準と自治体が独自で定めた基準を全て満たす必要がある。国の基準項目のなかには「管理組合の集会(総会)が年1回以上開催されていること」「管理費および修繕積立金について明確に区分して経理が行われていること」など16項目ある。豊田さんは「自身のマンションの現状把握は管理組合だけでは難しい。管理会社や専門家にも相談するなどして推進体制を整えるほうがよい」と助言する。

今後、築40年以上のマンションが急増すると見込まれている。国土交通省の推計によると、築40年以上のマンションは21年末時点で約115万戸あり、マンション全体の約17%を占める。10年後には2倍以上の約249万戸、20年後には約425万戸に増える見通しだ。

築40年以上たったマンションでは問題を抱えているところも少なくない。漏水や雨漏りが起きているところが40%、外壁などの剝落が18%といったように居住者や近くに住む住民にとって様々な危険をはらんでいる。

なお、鉄筋コンクリートのマンションは管理がしっかりしていれば100年ほど持つともいわれる。今回の特例制度を機に長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保して適切に管理できているのか見直してみよう。

(大城夏希)