不動産経済研究所(東京・新宿)が21日発表した2022年の全国の平均価格は前年比0.1%高い5121万円となった。10年前と比べると約1300万円高い。東京23区はこの10年で約3000万円上昇した。富裕層や海外投資家の購入意欲が旺盛な一方で、一般層には手が届きにくい状況が強まっている。
地区別でみると、首都圏が6288万円と前年比0.4%上昇したほか、近畿圏は1.6%高い4635万円だった。中核都市では仙台市が4661万円(2.8%上昇)、広島市が4455万円(2.1%上昇)、福岡市が4228万円(3.2%上昇)と前年実績を上回った。駅前や中心部にある高層マンションが価格を押し上げた。
22年に注目されたのは、三菱地所レジデンスなどが東京都千代田区で手掛けた「ザ・パークハウス グラン三番町26」で平均価格は3億円を超える。近畿圏では省エネ性能などが高い地上46階建ての「シエリアタワー大阪堀江」(大阪市)が人気を集めた。名古屋市内で発売された「プラウドタワー名古屋丸の内ステーションマークス」も注目物件となった。
新築マンションはこの10年の上昇幅が大きく、一般所得者層にとって「高値の花」の状況が続いている。東京23区は12年と比べ2950万円ほど高い8236万円になった。マンション用地や人件費が高騰したほか、円安などを背景に資材価格も高い。不動産各社は値下げをせず時間をかけて販売する戦略にカジを切っており、価格は下がる兆しが見えない。
一方で、発売戸数は減少傾向が続く。22年の全国発売戸数は前年比5.9%減の7万2967戸だった。2年ぶりの減少で、過去最多だった1994年の19万戸弱の4割程度にとどまる。不動産会社は再開発など案件を増やすために知恵を絞るが、最適な土地の確保は難しくなっており、この10年間で約2万900戸減った。
今後も「戸数減・価格上昇」の傾向は続く公算が大きい。共働きの増加や低金利環境の持続が購入の支えとなっているが、物価高などもあり慎重姿勢に転じる消費者も出始めた。在宅勤務の定着で広さを重視する傾向も強くなっている。人気の街や物件はどこなのか。
不動産情報サービスのLIFULL(ライフル)が22年に調査した首都圏の駅別「買って住みたい街」ランキングによると、東京・勝どきが4年連続で首位だった。勝どきは東京23区内だが、周辺相場と比べて比較的割安な「晴海フラッグ」がけん引している。
上位10位をみると、神奈川県の平塚や茅ケ崎が順位を上げ、本厚木(神奈川県)や大宮(埼玉県)、八王子(東京都)、千葉(千葉県)も入った。ライフルホームズ総研の中山登志朗チーフアナリストは「都心に行きやすい路線があり、広さや価格の面でもコスパの良い街に関心が集まっている」と説明する。
物件検討者は新築のほか、中古や賃貸物件なども選択肢に入れて住まい探しを進めている。新築マンションの注目点として、不動産経済研究所の松田忠司上席主任研究員は「価格上昇にどこまで顧客がついてこられるかだ」としており、顧客心理の変化がカギを握る。
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