不動産経済研究所(東京・新宿)によると、2022年の新築物件の1平方メートル当たりの単価は77万円と2年連続で最高値を更新し、前年比の伸び率は首都圏を上回った。顧客離れを防ぐため、割安な定期借地権付きマンションに力を入れるなどの動きも広がってきた。
23年内にも売り出される「うめきた2期」の分譲マンション価格が、近畿圏で過去最高水準になると注目されている。大阪最後の一等地と呼ばれる大阪駅北側の再開発エリアで、11年発売のうめきた1期のマンションは1戸当たり価格が最高で4億1500万円に上った。市内の1坪あたりの平均単価は当時から7割増えており、うめきた2期では1戸当たり7億円程度になるとの見方もある。
「タワマンは住宅ではなく(投資用の)美術品になってきた」(大阪市内の不動産関係者)。不動産経済研究所によると、近畿圏では22年までの5年間で1平方メートル当たり単価が23%増え、首都圏の伸び率(11%増)を上回った。エリア別では大阪市が26%、京都市が36%増えた。首都圏より割安だった分、伸びが目立つ。

大阪市内の契約率は22年で77.5%と好不調の分かれ目となる70%を上回る。大和ハウス工業の島田裕司・本店マンション事業部長は「都心部の利便性の高い物件が堅調だ」と指摘。大阪市西区の「プレミストタワー靱本町」は最高価格が3億円弱だが、350戸のうちキャンセルが出た1戸を除き完売した。購入した経営者の女性(61)は「値段は高いが、資産性が高く価格は下がらないと思う」と話す。
大和ハウスはこれまで郊外での開発を含めて戸数を増やす戦略だったが、今後は戸数を絞ってでも都心部での開発を優先する方針だ。
住宅ローン金利には先高観も出ており、顧客の購買意欲が低下すればマンション価格の不透明感が強まる。ただ、高層マンション仲介の「タワーズ」を運営するES&Company(大阪市)の担当者は「最近は海外の顧客が投資目的で購入する事例が増えているが、それでも7割ほどは実需で購入している」と説明。投機筋が主導したバブル期とは様相が異なるようだ。

建設物価調査会(東京・中央)によると集合住宅の12月の工事原価(大阪)の指数は直近1年で6%伸びた。一般にマンションは着工から完成まで数年かかり、資材高の影響は今後の販売価格に上乗せされる可能性がある。一部物件では発売後に値上げを決める例もあるという。
都心の物件は富裕層や高所得の共働き世帯以外は手が届かず、不動産経済研究所の笹原雪恵・大阪事務所長は「広い物件を求めるファミリー層などは郊外に目を向けざるを得ない状況になっている」と話す。同研究所は近畿圏の22年の発売物件数が1万7858戸と当初予測を下回り、23年も微増にとどまるとの見方を示す。笹原氏は「価格を抑えるために仕様・設備を見直すなど、発売時期を後ろにずらす物件が出ている」と指摘する。
不動産各社には割安な住まいを用意し、一般的な所得層の取り込みを狙う動きも出ている。関電不動産開発は70年間など一定期間後に土地と物件を手放す「定期借地権付きマンション」に注力する。購入者は土地を所有するのではなく借りる形で、同じ立地であれば2割程度安く買える。16年以降に1200戸を手掛け、26年までの4年間でさらに800戸発売する計画だ。
大阪ガスは中古物件の需要が伸びていることを受け、22年から仕入れからリノベーションまで手掛ける事業を新たに始めた。22年秋には大阪市内に新たなショールームを設け、22年度内に40件の受注を目指している。
(泉洸希、仲井成志)
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