スクウェア・エニックスがブロックチェーンを活用したサービスの開発を進めている。NFT(非代替性トークン)を使ったデジタルシールの販売枚数は2月時点で12万枚を超え、23年春には新サービスの提供を予定している。値上がり益を狙った投機マネーではなく、エンターテインメントとしての新しい価値形成に向け積極的に展開している。
「販売枚数の規模は国内最大級だ」とスクウェア・エニックスのブロックチェーン・エンタテインメント事業部の畑圭輔事業部長は手応えを語る。21年10月からNFTデジタルシール「資産性ミリオンアーサー」を販売し、シリーズ累計販売枚数は12万枚を超えた。12年に提供開始したスマートフォンゲーム「ミリオンアーサー」シリーズの世界観を活用し、NFTのシールを使ったサービスを提供している。
1枚800円程度でシールを購入し、シールホルダーに貼って楽しんだり、ポイントをためたりして遊べる。ユーザーが選んだ背景画像やフレームをシールに焼き込み、オリジナル性を高めることできる。シールはLINEの運営するサービスを使って売買できる。23年春にシールを使ったゲームコンテンツを追加する予定だ。
ブロックチェーンゲームは遊びながら稼ぐ「Play to Earn(プレイトゥアーン)」の側面に注目が集まり投機マネーによって膨らんできた。一方で、稼ぐ目的が先行すると、暗号資産市場の動向に合わせて利用者数が激減することもある。継続的に遊んでいるうちに、少しずつポイントがたまるような「ポイ活」に近い楽しみ方ができるサービスを目指す。
ミリオンアーサー以外にもNFT活用の実績を積んでいる。22年7月には人気ゲームタイトル「ファイナルファンタジー」の新作フィギュアなどでデジタル正規品証明書を発行した。今春にはNFTアートを使い、謎解きなどを楽しめる「SYMBIOGENESIS(シンビオジェネシス)」を提供する予定だ。事業での提携を視野に、メタバース「ザ・サンドボックス」の運営会社へも出資している。

「持続的にサービスを運営していくことが企業ブランドの構築につながる」と畑氏は話す。消費を促すだけでなく、継続性を重視する。他社に先駆けてサービスを提供することで、ブロックチェーン領域での信頼感を得る狙いもある。
インドの調査会社マーケッツアンドマーケッツ社によれば、世界のNFT市場規模は27年までに22年比4倍強の136億ドル規模になる見通しだ。
「狂乱から混乱を経て、新しい成長のステージへと移行してゆく年となることを期待します」。スクウェア・エニックス・ホールディングスの松田洋祐社長は1月に発表した年頭所感でブロックチェーンゲームについて期待感をつづった。
現時点ではNFTを保有するための手続きは複雑で、大半のゲームユーザーやエンタメの消費者には届いていない。技術の可能性を引き出し、価値のあるサービスにしていけるか。世界中から愛されるゲームを生み出してきたスクエニの挑戦に期待がかかる。
(藤生貴子)
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