· 

エニーカラー株が急伸 ライバル「カバー」上場で再注目 Vチューバーのマネジメント事務所

2月17日の取引終了後に発表した。2022年6月に上場したANYCOLOR(エニーカラー)と並ぶ業界の2大巨頭で、互いに競い合い業界を盛り上げてきた。ライバルの上場を歓迎するかのように、20日のエニーカラー株は大きく上昇した。

「にじさんじ」対「ホロライブ」 ブームけん引

18年1月にエニーカラーが「にじさんじ」、同年6月にカバーが「ホロライブ」と両社は同時期にVチューバーグループを立ち上げた。ここが今日に至る本格的なブームの始まりだ。足元のユーチューブのチャンネル登録者数はホロライブの宝鐘マリンさんが230万人程度、一方のにじさんじの壱百満天原サロメさんが173万人程度、葛葉さんが148万人程度(いずれも23年2月時点)となっており、ゲームや歌のライブ配信で多くのファンを魅了している。

直近では、ホロライブのさくらみこさんが東京都から「東京観光大使」に任命され、サロメさんが登場するヤクルト本社のヨーグルトCMが話題となるなど、活躍の場はネットの世界にとどまらない。

20日の東京株式市場でエニーカラー株は前週末に比べ一時7.9%高の5150円まで急騰した。市場では「同業他社の上場で、株式市場においてVチューバー銘柄が盛り上がるとの思惑から資金が向かっているようだ」(東洋証券の安田秀樹シニアアナリスト)との声が聞かれた。カバーの上場時の時価総額は433億円(想定発行価格に基づく)で、エニーカラーの上場時の458億円(公開価格に基づく)と同程度が見込まれている。

成長率、利益率はエニーカラーに軍配

両社の業容を比べると、カバーの22年3月期(前期)の売上高は136億円で、エニーカラーの22年4月期(前期)の141億円と同水準だった。一方、所属タレント数はエニーカラーが英語圏などを含め足元で160人を超えるのに対し、カバーは70人ほどで少数精鋭といえるかもしれない。また、カバーはメタバース事業の「ホロアース」の開発を進めている点にも特色がある。22年12月にはバーチャル空間上でのVチューバーのライブイベントを開催した。

ただし、今期の会社予想の業績ベースでは成長率、利益率ともにエニーカラーの方に軍配が上がる。エニーカラーは売上高が前期比59%増の225億円、税引き利益が90%増の53億円と大幅な増収増益を見込む。対して、カバーは売上高が前期比32%増の180億円、税引き利益が15%増の14億円の予想だ。

エニーカラー株は22年10月に1万3790円の上場来高値を付けた後、売却制限(ロックアップ)が明けた大株主の売りが相次ぎ、株価はピークから6割ほど安い水準で低迷している。カバーの上場方針を受け相対的な収益力の高さに日が当たり「見直し買いが入っている可能性がある」(東洋証券の安田氏)との指摘もある。ネット上では確かな支持を得ているVチューバー企業だが、株式市場でもファン定着となるか注目される。

〔日経QUICKニュース(NQN) 大沢一将、山田周吾〕