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インターナショナルスクール、地方に 治安良い日本照準

英国の名門私立校として知られるパブリックスクールでは、岩手県で開校した「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」に続き、9月には「ラグビースクールジャパン」が千葉県に進出する。海外の有力校は治安が良く地政学リスクも低い日本に照準を定めている。

 

英国の名門私立校として知られるパブリックスクールでは、岩手県で開校した「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」に続き、9月には「ラグビースクールジャパン」が千葉県に進出する。海外の有力校は治安が良く地政学リスクも低い日本に照準を定めている。

「インターナショナルスクールタイムズ」の村田学編集長によると、国内のインターナショナルスクールは少なくとも80校あり、60校程度だった10年前から急増している。多くは学校教育法上の「各種学校」だが、海外の大学への進学を念頭に置く富裕層の入学希望は多い。

近年開校が相次ぐのは英国系で、豊かな生活環境を求めて地方への進出が相次ぐ。22年に開校したハロウ安比校(岩手県八幡平市)には13カ国・地域の学生約180人(1月時点)が在籍する。小学6年生から高校3年生まで将来は約900人が学ぶ予定で、インターナショナルスクールでは国内最大級の全寮制学校となる見通しだ。

ラグビー校の日本校は9月、千葉大学柏の葉キャンパス(千葉県柏市)内で開校する。チャーチル元首相らを輩出したハロウスクールと共に、英国の名門パブリックスクール「ザ・ナイン」の一角を占める。東京都小平市に9月に開校する予定の「マルバーン・カレッジ東京」も英国系だ。

来日する駐在員の子弟向けでは、森ビルが建設中の再開発地域「麻布台ヒルズ」(東京・港)に「ブリティッシュ・スクール・イン東京(BST)」の幼児・初等教育科キャンパスが移転、集約される。「多くの入学希望があり、東京の中心部に広い施設と充実した設備の校舎が必要だった」とポール・タフ学校長。

約1万5000平方メートルの校舎には運動場やプール、屋上庭園、音楽スタジオも設け、デザイン集団のトーマス・ヘザーウィック・スタジオが設計した校舎も斬新だ。森ビルは「国際都市の競争力を高めるには優秀な人材を世界中から集める必要がある」(平野文尉氏)。教育機能の充実が刺さるとみて、総事業費6000億円の大型再開発にBSTを組み込んだ。

ブリティッシュ・スクール・イン東京は都心にありながらグラウンドなどを備えた校舎として整備するのが特徴 ⒸDBox for Mori Building Co.

22年9月に開校した国際高等学校(愛知県日進市)は学校教育法上も小、中、高等学校と同格の「1条校」。文部科学省の学習指導要領に準拠しており、卒業後の進路も選択肢が増える。

JR福山駅から車で約50分。標高約600メートルの山間部に20年に開校した、国内初の全寮制小学校「神石インターナショナルスクール」(広島県神石高原町)も1条校だ。農場や日本庭園など、83万平方メートルの広大な敷地に約45人が学ぶ。校舎や寮はリゾートホテルの跡地を活用している。

22年度は5年生5人が英国やスイスなどの著名な全寮制中学から進学許可をもらったという。末松弥奈子理事長は「日本で教育の選択肢を増やしたい」と話す。海外進学を目指す日英バイリンガル教育が基本で、茶道を取り入れるなど日本文化も重視する。1クラス12人までの少人数制で、担任は外国人と日本人を1人ずつ配置する。

神石インターナショナルスクール(広島県神石高原町)は1クラス12人までの少人数制で授業が進む

米中対立やロシアのウクライナ侵攻で国際情勢が不安定化し「アジアの富裕層からも日本国内のインターナショナルスクールへの注目度は高まっている」(村田氏)。国境をまたいででも、安全で物価も安定している日本で子どもに学校生活を送らせたいという需要は根強い。

(伴和砂、牛山知也)