日本アニメの選出は宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」以来21年ぶり。同部門の審査委員長は30代の米国俳優クリステン・スチュワートが務める。
「すずめの戸締まり」は、東日本大震災を題材にした作品で、高校生の鈴芽(すずめ)が、災いをもたらす扉を閉める「閉じ師」の草太と旅をする物語。日本国内では昨年11月に公開され、興行収入は130億円を超えるヒットとなっている。同映画祭のコンペの規定であるインターナショナルプレミア(海外での初上映)という条件を満たしての選出となった。新海監督は「海外の観客にどのように映るのか、なにが伝わり、なにが伝わらず、なにを共有し得るのか。自身の耳目で確かめる好機をいただけた」とコメントした。

アジアからは他にチャン・リュル監督(中国)の「白塔之光」が選ばれた。長く失われていた父と息子の関係の回復と、恋愛を絡めたラブストーリーだという。チャン監督は中国朝鮮族3世で、韓国を拠点に日本を舞台にした映画も作ってきた。池松壮亮が出演した京都が舞台の「柳川」は昨年12月30日に日本公開されたばかり。今回の選出を機にチャン監督の過去作も日本で一般公開されることを期待したい。
「水を抱く女」「東ベルリンから来た女」など日本でも公開作が多いクリスティアン・ペッツォルト監督(ドイツ)の新作「Afire」も選出された。同国バルト海沿いの別荘で周囲の乾燥した森が火事になるにつれて感情が高まっていく4人の若者たちの物語で、同性愛やクィアの要素が入っているもよう。「灼熱(しゃくねつ)の肌」「ジェラシー」のフィリップ・ガレル監督(フランス)の「The Plough」は、息子でルイ・ガレルと娘のエステル・ガレルが主演する家族ドラマだという。
娯楽性や話題性のある作品が集まるベルリナーレ・スペシャル部門には、熊切和嘉監督「#マンホール」(公開中)が選ばれた。中島裕翔の主演で、マンホールに落ちた男の苦闘を描いたシチュエーション・スリラーだ。
3月3日に「フェイブルマンズ」の日本公開を控えるスティーブン・スピルバーグ監督(米国)に生涯功労賞として名誉金熊賞が授与されることが決まっている。
(近藤佳宜)
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