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東京23区の大学、デジタル系学部の定員増容認 政府検討

政府は東京23区の大学定員規制を2024年度にも緩和する検討に入った。原則禁止している学部新設や既存学部の定員増をデジタル分野に限り認める。IT(情報技術)企業が集まる都心部で産学連携を深め、成長産業の人材育成や国際競争力の向上につなげる。

内閣官房の有識者会議が近く定員規制の緩和案を示す。政府はこれに基づいて関連の政省令を改正し、定員増禁止の対象外となる基準を設ける方向だ。

内閣官房によると21年時点で各大学の23区内にある学部への入学定員は約12万2千人で、全国(約62万3千人)の2割を占める。23区内に本部を置く大学は22年時点で101校あり、全体(807校)の1割強にあたる。

新設を認めるのはデジタル分野の人材を育てる情報系の学部や学科。既存の理工学部や情報学科、情報科などの定員拡充を認める案もある。増員は期間限定の臨時対応と位置づけ、一定期間を経た後に元に戻す。

経営余力のある大規模な私立大などを想定し、政府が全国知事会などと相談して判断する。

定員規制は18年に施行した地域大学振興法で導入した。28年3月末までの10年間の時限措置として23区内の大学の定員増を原則認めないと定めた。進学時に地方から東京への過度な人口流出を抑える狙いがある。

日本はデジタル分野の人材不足が指摘される。政府は30年に最大79万人ほど足りなくなると予測する。需要が旺盛な成長分野へ人材投入しにくい状態が続けば潜在成長率の低下を招きかねない。

データサイエンス系や情報系など「デジタル人材を育成する学部・学科」を有する大学は21年度時点で全国に137ある。入学定員は合計でおよそ2万1600人だ。企業にはこうした学部や学科からの人材輩出に期待がある。

20年度の大学発スタートアップの数は三大都市圏(東京、大阪、愛知)で平均422社だった。その他の地域は平均37社と差がある。

デジタル人材を活用する情報通信企業は東京に集中しており、実務家による講義やインターン受け入れといった機会提供の面でもデジタル教育は東京を拠点とするのが望ましいという見方がある。

政府によると海外で大学の立地だけを基準に定員抑制する規制はほとんど例がない。一極集中を抑える方策としては規制よりも地方大学自体の魅力向上、地方大学と企業の集積地づくりといった取り組みに軸足を置く。