デジタル技術で建設業界に変革をもたらそうとしているスタートアップ企業などが手を組む。施工管理アプリを手掛けるアンドパッド(東京・千代田)など、建設テック企業を中心とする6社は1月24日、建設分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を目的とした任意団体「建設DX研究所」を設立したと発表した。
最先端技術に関する情報共有や建設業界の課題解決に向けた政策提言などを活動内容に挙げる。会費は取らず、法人格も持たない。代表はアンドパッドの岡本杏莉執行役員が務める。月1回の頻度で会合を開く予定で、23年1月に初回を開催した。
参加企業はアンドパッド、構造計画研究所、セーフィー、Polyuse(ポリウス、東京・港)、Liberaware(リベラウェア、千葉市)、ローカスブルー(東京・渋谷)の計6社。このうち建築技術コンサルティング大手の構造計画研究所を除く5社は、12年以降に設立された企業だ。
アンドパッドは建設テック系スタートアップの筆頭格として知られる。写真や図面を管理したり、日報や工程表を作成したりできる施工管理アプリ「ANDPAD」を建設会社などに提供してきた。2023年1月時点で利用社数は15万社、ユーザー数は41万人に上る。22年9月に約122億円の資金を調達し、累計資金調達額は約209億円に。建設テック企業では群を抜く。
セーフィーはクラウドを活用した監視カメラシステムを展開し、施工管理などの遠隔化をサポート。ポリウスはセメント系建設3Dプリンターの開発を手掛ける。
リベラウェアは天井裏や配管内など屋内を撮影する点検用のドローンを開発しており、点検サービスも提供する。ローカスブルーはインターネットとウェブブラウザーがあれば利用できるオンライン点群処理プラットフォームで、現場の3次元データ化を後押ししている。
建設DXへ「新参者が業界にインパクト」
もともとアンドパッドは単独で研究所を立ち上げ、21年からコンテンツ投稿サイトのnote(ノート)で建設DXに関する情報発信などをしていた。6社による研究所の設立はアンドパッドの呼びかけで実現した。
「個社の活動では知見が特定の領域に限られる。巨大で複雑な建設業界のDXを推進するには、さまざまな領域をカバーする企業が集まって、業界全体を捉えた議論をするのが大切だと考えた」。岡本代表は設立の意図をこう説明する。
建設事業の各プロセスでビジネスを展開してきた各社が、それぞれの領域で培ったノウハウを共有する。そうすることで、人手不足への対応や生産性の向上といった課題解決に、より実効性の高い体制で取り組むのが狙いだ。
例えば、法令などで目視や対面、常駐などを義務付けたアナログ規制の撤廃に向け、遠隔であっても安全性や品質を担保できるようにするための方策などを議論していく。
まずはアンドパッドがこれまでにビジネス上のつながりがあった企業を中心にコアとなる6社を集めた。「まだまだカバーしきれていない領域がある」と話す岡本代表は、「将来的にはさらにメンバーを増やしていく」と意気込む。
「残業時間の上限規制が24年4月に迫っていることなどから、建設DXを推進する機運が国、業界ともに高まっている。建設業界にとって我々は新参者だが、新しいテクノロジーに精通する企業が力を合わせれば、業界に大きなインパクトを与えられるのではないか。新しい風を吹かせたい」(岡本代表)

noteには日本経済新聞社が出資している。
(日経クロステック/日経アーキテクチュア 星野拓美)
[日経クロステック 2023年2月2日付の記事を再構成]
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