こうした困りごと解決を「電気、ガス、水道、通信に次ぐ第5のインフラ」に定着させることが目標だ。
きっかけは買い物支援事業の失敗。顧客へのおわび行脚でお年寄りの困りごとの存在を知り、2010年からサービスを始めた。
半年後、高齢女性から電球交換の注文を受けマンションを訪ねた。無施錠だったドアを開けると、奥から時代劇のテーマ音楽が聞こえる。不用心の理由を聞くと「インターホンが壊れている」。呼び鈴も鳴らずカギをかけたままでは不在と思われ、社会から完全に遮断されてしまう不安を感じていた。
電池を替え修理を終えると「誰に頼めばいいかわからなかった。これで外とつながれる」と涙を流して喜んでくれた。孤独と不安から不眠になっていたという。
ネットの買い物支援では「お年寄りを単なる『弱者』と上からの目線で見ていた」。それがこの日、安堵の表情に触れ、気がつくと一緒に泣いていた。
大学を卒業後、不動産管理会社を経て起業した不動産仲介会社では億単位の契約を扱うことが日常となり、お金を増やすゲームにのめり込む一方で、精神的に追い込まれた。副業の失敗から互いに喜び合える支援の価値に気づき、9年続けた本業をやめた。
家事代行料は30分を超えると5分300円になる。ただ、「ついでにやってもらえないだろうか」という超過分のお願いは、行政などの手が届きにくいニーズも発掘する。埋もれている「ちょっとした困りごと」は、頼れる相手もなく引きこもる団地住民の生活実態と重なる。
大学生らはスマホから空き時間のバイトを選ぶ。隙間時間を埋めるだけではない。困りごとを見つけようとする姿勢が、社会で生き抜く力を養うとみる。
現在より死者数が20万人以上増え140万人以上が亡くなる「多死社会」が迫り、支援が必要なお年寄りは1000万人規模になる。急速に老いる団地からの声を聞くと、このままでは支えきれない限界を肌で感じる。最近、50~70代のシニアスタッフの募集も始めた。「地域が地域で支え合う仕組みづくり」が次のステップだ。(和佐徹哉)
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