自治体からの改善勧告に対応しない場合に、住宅の固定資産税を減らす特例から外す。中心市街地などに限定して建築規制も緩和する。高齢化で住宅の相続が増えることを見据え、所有者に適切な管理や活用を求める。
国土交通省の有識者会議が31日に提言を示した。提言をもとに政府は空き家対策特別措置法改正案を3月上旬にも閣議で決め、今通常国会への提出を目指す。早ければ2023年度中に対策を実施に移す。
国交省によると国内の空き家数は18年時点で849万戸に上る。このうち賃貸や売却用などを除いた、居住目的のない空き家は349万戸で20年前からほぼ倍増した。高齢化で住宅を両親から相続した子が放置するケースなどが目立つ。適切な対策をとらないと30年には470万戸まで増える見通しという。
対策の柱の一つが管理体制の強化だ。住宅用地は固定資産税を減額する特例がある。持ち主が空き家を放置する一因になっているとの指摘があった。倒壊する危険のある「特定空き家」は改善勧告に従わなければ特例から外せる。
今回の見直しでは、その予備軍となる「管理不全空き家」を除外対象に加える。壁に亀裂が入ったり、窓の一部が割れたりしている建物を想定する。全国で少なくとも約24万戸が当てはまる。法改正後に指針で具体的な条件を定める。
特例から外れ、平均的な宅地になると所有者が納める税額は4倍程度に増える。空き家は放置期間が長くなるほど防災や景観、衛生上の問題も生じやすい。周囲に悪影響を及ぼす前に早期の建物の改修や売却を迫る。
空き家は自治体にも重荷となっている。茨城県土浦市は1月中旬、空き家対策法に基づき築100年を超える空き家の解体工事を始めた。同市で初の行政代執行だった。
市は12年にこの空き家の所有者に対応するよう指導や勧告をした。19年には特定空き家に認定したが、手続きなどもあり、解体着手に時間を要した。解体費用は200万円強で、費用を相続人に全額請求する。
京都市は22年、空き家などの所有者への課税措置を盛り込んだ条例を制定した。普段は住んでいない物件を対象に固定資産税の評価額に応じて新税を課し、空き家対策の財源に充てる。26年1月以降に施行する。
空き家対策として政府が力を入れるもう一つの柱は空き家の有効活用に向けた規制緩和だ。中心市街地や観光地などを対象に「活用促進区域」を創設する。住宅に用途が限定されている区域の建物でも、市町村が活用指針を定めれば、店舗やカフェなどに使いやすくする方向だ。
建物を建て替えるには、防災や緊急車両通行のため幅4メートル以上の道路に接して建てる義務がある。燃えにくい構造にするなど安全を確保することができればこうしたルールを緩めることも検討する。
国交省調査では、空き家の所有者の3割は将来もそのままにする意向を示した。賃貸や売却の意思があっても「何もしていない」との回答は4割に上る。
管理強化や優遇見直しで危険な空き家をへらしつつ、中古住宅市場の活性化で空き家を生かす対応が重要になる。31日の会合で、東洋大の沼尾波子教授は「地域の将来像の共有を通じ、地域レベルで空き家をそのままにしない意識を醸成することが大切だ」と指摘した。
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