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三菱地所、自由度高いオフィス増床 多様な勤務に対応

三菱地所は顧客ニーズに沿ったオフィスの供給を増やす。事業買収によるシェアオフィスの拡大のほか、東京・丸の内地区で2030年までに好きな時間に使えるフレキシブルオフィスの面積を3倍に増やす。ワーケーションの広まりにも対応する。新型コロナウイルスで働き方が多様化し、従来の出社だけではなくなった。多様なオフィスを増床し、提案力を高め、ビルや街の競争力をつける。

 

「自分の最大限の能力を引き出してくれる空間が求められる」。三菱地所の吉田淳一社長はかねて、顧客に寄り添ったオフィスが求められる考えを示し、オフィスの広さや形態を広げてきた。ただ、三井不動産などと比べ見劣りする分野があった。

シェアオフィス事業を買収

そこでまずシェアオフィスで23年2月、貸会議室大手のティーケーピー(TKP)からリージャスの日本事業を約380億円で買収する。リージャスはスイスのIWGが展開するブランドで、世界120カ国以上で3000超の拠点を持つ。

国内でリージャスブランドのシェアオフィスは約170カ所ある。三菱地所はシェアオフィスを自社ビルに入居させることを計画し、リージャスが持つネットワークも活用する。テナント企業の獲得競争が激しさを増すなか、新たな入居企業を呼び込む。

完全個室が多い「サービスオフィス」とシェア型の「コワーキングオフィス」で構成する「フレキシブルオフィス」全体で攻勢をかける。三菱地所では22年4月、企画立案する「フレキシブル・ワークスペース事業部」を新設した。「国内のフレキシブルオフィス市場は23年以降も拡大が見込まれる」(ジョーンズラングラサールの大東雄人シニアディレクター)なか、自社でも同オフィスを増やす。第1弾として23年春、丸の内に2つのオフィスを設ける。

フレキシブルオフィスを3倍に

丸の内パークビルには約3000平方メートルの場所を用意する。カフェラウンジやサービスオフィスのほか、人数に応じた会議室がある。岸本ビル内のオフィスは月単位や曜日単位で利用できる個室を設置する。ラウンジにはバーカウンターを設け、入居企業や顧客との交流を楽しんでもらう。三菱地所として、現在丸の内で1万坪あるフレキシブルオフィスの面積を30年までに3倍の3万坪に広げる。

国内では観光地に滞在しながら仕事をするワーケーションも広がっており、三菱地所はプロ野球日本ハムが北海道北広島市に23年開業するボールパーク内に専用施設を開設する。

三菱地所は成長が見込めるフレキシブルオフィスが手薄だった。米ウィーワークのほか、三井不動産や東急不動産などが拠点を増やすなか、三菱地所はスタートアップ向けの共同利用オフィスを運営する程度にとどまっていた。弱みの解消に手を打ち、出社や在宅勤務、リモートワークといったハイブリッド型の働き方に対応する。

(原欣宏)