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三井不、ホテル戦略見直し レジャー客狙いプール設置

三井不動産は主力の「三井ガーデンホテル」の出店戦略を見直す。施設内にプールなどを用意し、家族連れを中心としたレジャー利用を強化。複数名で泊まれるようにすることで、出張利用以外の顧客を取り込む。国内で約1万室を運営するなか、順次改装や新設を進め、ホテル事業の拡大を目指す。

三井不動産の子会社、三井不動産ホテルマネジメントがホテル事業を手掛ける。現在は三井ガーデンホテルを中心に、国内外で40施設、約1万室を運営している。不動産業界では三菱地所住友不動産を上回る事業規模を誇る。

三井ガーデンホテルはこれまで、企業の出張利用が目立ち、稼働率重視の姿勢も強かった。狭い客室も多いため、家族連れや女性客の団体利用を取り込めていなかった。新型コロナウイルスの影響で出張が激減したなか、ブランド変更を含め、新たなホテル戦略を打ち出すことに決めた。

まず、2023年5月、横浜市・みなとみらい21地区の27階建ての大型複合ビルに新規出店する。三井ガーデンホテルにとって、9つ目のプレミアシリーズで、客室数は364室。全室が21階以上の高層階にあり、多くの部屋では天気が良ければ富士山も見える。

屋内外にプールを設け、家族連れやカップルらの需要を取り込む(横浜・みなとみらいのホテルのイメージ)

ホテルの特徴は屋内外にプールを設けたことだ。ジェットバスやフィットネスジムも用意。家族連れやカップルに加え、中長期的に訪日観光客の需要を見込む。数人の女性客や家族が一緒に泊まることも想定し、ベッドを3つ置いた部屋も30室設置した。

24年秋には東京・築地に新たなホテルを開業する予定。三井ガーデンホテルでは初めて、全室(183室)に洗濯機や電子レンジ、冷凍冷蔵庫を備える。連泊や中長期の滞在を好む国内外の宿泊者のニーズに対応するのが狙いだ。

東京・築地に開くホテルでは連泊や中長期の滞在を好む宿泊者のニーズに対応する(イメージ)

三井不動産の浜辺悟ホテル・リゾート本部グループ長は「新型コロナで顧客のライフスタイルやホテル利用法が多様化している」と話す。三井ガーデンホテルについて60代男性の認知度が高い半面、20〜30代女性の認知が弱いという。新たなホテル戦略を通じ、泊まるだけでなく体験や楽しむ場である点を伝える。

既存のホテルではシングル利用の部屋を減らし、複数名での利用の部屋を増やしている。宿泊料金の引き上げを進める一環で、利用者の満足度向上のため、広島市内の既存施設には宿泊者専用のラウンジもつくった。

三井不動産は三井ガーデンホテルについて、「足元で(政府の観光促進策の)全国旅行支援の後押しもあり、国内旅行者らの宿泊増で稼働率は高まっている」(ホテル担当者)との考えを示す。新型コロナの収束や国際線の本数増加などを背景に、訪日客は徐々に回復していくことが期待されるが、国内では今後、外資系を含め新規のホテル開業が見込まれている。いかに自社ブランドのファンを増やし、リピーターを獲得していけるかがカギを握る。

(原欣宏)