地球は、消滅を逃れたとしても別の困難が待ち受ける。太陽が膨張を始める前に人類のような高等な生物がすめない環境になる可能性が高い。
「酸素に富む地球環境の持続期間は残り約10億年」。東邦大学などの研究チームが21年に英科学誌ネイチャー・ジオサイエンスに報告した論文は多くの生物にとって欠かせない酸素がほぼなくなり、酸欠になるという衝撃的な内容だった。
太陽光が強くなり、温度が上がる。地球表面の物質循環などによる大気と海洋中の酸素量の変化をコンピューターシミュレーションで予測したところ、10億年程度で酸素の量が現在の1~10%に減った。
研究を主導した、現在は東京工業大学の尾崎和海准教授は「現在のような酸素に富んだ地球環境が永続的に続くものではないことを初めて定量的に明らかにした」と話す。酸素を必要としない微生物もいるが、哺乳類など多くの生物は今のままでは生きていけない。

NASAなどは小惑星の軌道を変える実験に成功した(イメージ図)=NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben提供
さらに10億年より前にも危機が訪れる。小惑星の衝突などだ。約6600万年前に直径約10キロメートルの小惑星が衝突し、恐竜を含む生物種の4分の3が絶滅した。この大きさの小惑星の衝突は数千万年から約1億年に1度の頻度で起きる。
それでも希望はあると科学者はいう。生命は約40億年前の誕生以来、これまで生き延びてきた。多くは偶然にすぎないが、人類は自力で危機を乗り越える力を秘める。
22年秋、NASAは小惑星に無人機をぶつけて軌道を変える実験に成功した。地球に衝突しそうな小惑星の行く手を阻み、地球を防衛する準備を進める。
地球にすめなくなっても、人類の子孫を残す可能性を見据えた「移住」も話題になる。現在の技術では荒唐無稽に思えるが、まずは月や火星など近場へ移り住む発想だ。
米国主導で日欧なども参加する月面探査「アルテミス計画」は月に基地を建設する予定で、完成すれば地球外の星に初めて人類が長期滞在する。月面で水や鉱物資源などを調達し、火星有人探査の足がかりにする構想も検討されている。宇宙企業を率いる米起業家イーロン・マスク氏はかねて「2050年までに100万人が火星へ移住する」と語ってきた。

人類が月面で活動する様子を描いた想像図=NASA提供
22年12月、スペインのカナリア天体物理学研究所の研究チームは地球から16光年弱離れた恒星の周りで、地球と同程度の質量で恒星からの距離も生物が誕生するのにほどよい環境をもたらす「ハビタブルゾーン」にある惑星を2つ見つけたと報告した。観測技術の向上で続々と「第2の地球」の候補は見つかっている。
今を生きつつも、新境地を開拓する精神が地球の発展を導いてきた。人類は科学で得た知見を無駄にせず、将来を模索していく。
(福岡幸太郎)
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