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[FT]ブラックストーンの不動産ファンド、解約請求相次ぐ

Financial Times

米投資会社ブラックストーンが運用する不動産ファンドで50億ドル(約6500億円)を超す解約請求を受けている。同社の別の不動産ファンドでも解約請求が殺到しており、投資家からの資金引き揚げ圧力が一段と増している。

同社は26日の決算説明会で、年金基金や大学基金など大手機関投資家向けの不動産ファンド「ブラックストーン・プロパティー・パートナーズ(BPP)」について、ファンドの純資産総額730億ドルの7%に当たる解約請求が寄せられたことを明らかにした。

BPPはブラックストーンが運用する数十本の不動産ファンドで構成している。その中の一部のファンドに新規資金が流入するまでは解約請求を免れるとの規定があるため、同社は投資家の求めに応じていない。

同社は昨年、別の非上場不動産投資信託(REIT)「ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)」でも、富裕層の個人投資家などから大量の解約請求を受けた。投資家が不動産市場の長期的な健全性や短期資金調達に懸念を抱いているからだ。

だが、同社は12月からBREITの解約を制限した。純資産総額690億ドルに上るBREITの運用を維持するため、解約の上限を1カ月で純資産の2%、四半期で5%と定めており、その上限を突破したのを受けた措置だという。

ジョナサン・グレイ社長は26日、フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューに応じ、一部の投資家が請求の履行を求める中で、1月に入ってもBREITの解約請求は「増加」していると懸念を示した。

グレイ氏は「11月、12月の請求の未処理分がまだ残っている。だが、外部アドバイザーの見通しは大幅に好転している」と語った。

カリフォルニア大学は追加投資

BREITの解約制限を受けてブラックストーン株は急落した。だが、1月に入って市場全体が反発したほか、カリフォルニア大学(UC)がBREITに40億ドル投資したことが明らかになり、株価は持ち直している。

同社はUCに対し、6年間の運用期間中、年11.25%の利回りを保証し、達成できなければ最大10億ドルを支払うとしている。利回りが11.25%に届かないか、または補塡額が10億ドルに達した場合、ブラックストーンは所有するBREITの持ち株を大学側に譲渡する。

UCは25日、BREITに5億ドルを追加投資し、ブラックストーンも年11.25%の利回りを保証するため新たに1億2500万ドルの持ち株を拠出した。

仮にUCがBREITではなくBPPに投資していれば、それをBPPの償還資金に回せた可能性もある。

UCとの契約内容について投資家から苦情が出ていないか問うと、グレイ氏は「他の機関投資家からBPPとBREITを比べるような話はほとんど聞こえてこない」と答えた。

ブラックストーンはBPPの解約請求に応じることは可能とみる一方、流動性リスクが高まり、年内に手数料を引き上げたり、純資産の伸びの鈍化が続いたりする可能性もあるとしている。

同社が償還期間を定めずに運用する不動産ファンドの純資産額は2022年第4四半期(10〜12月期)に約1.5%低下したが、同年通期では不動産収入の増加に支えられ10%以上増えた。

投資家から同社への資金流入は続いており、同年第4四半期には430億ドル以上調達し、運用資産総額は過去最大の9750億ドルに達した。

26日発表の第4四半期決算は大幅な減益となった。BREITの運用成績低下と経済情勢の悪化によって手数料ベースの収益が打撃を受けた。

運用報酬を示す手数料関連収益は42%減の11億ドルに落ち込んだ。全体的なキャッシュフローの代理指標としてアナリストが重視する分配可能収益は約10億ドル減少し、13億ドルになった。1株利益ベースはブルームバーグ通信がまとめたアナリストの予想と同じか上回る水準だった。

26日のニューヨーク市場では、同社株が午後に入り3%以上上昇した。

By Antoine Gara

(2023年1月27日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)