· 

重み増す「ソフトスキル」力 新風シリコンバレー ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社長 ロッシェル・カップ氏

「ハードスキル」とは一般的にプログラミング、デザイン、戦略立案、分析などのテクニカルスキルを指す言葉である。一方、「ソフトスキル」はコミュニケーション力、共感力、コラボレーション、適応性、ストーリーテリング、謙虚さ、チームビルディングといった対人関係のスキルに関連するスキルである。優れた社員やよいリーダーであれば必ず持っているスキルだと言える。

 

シリコンバレーでは部屋に閉じこもって完璧なソフトウエアを作り、技術的な奇跡を起こす伝説の「ロックスター」コーダーがよく登場する。そして実際、競争が激しく、常に進化を続けるハイテク産業では強力なテクニカルスキルを持つことは成功のカギを握っている。

しかし、シリコンバレーのリーダーたちは一般社員と管理職の社員の両者において、ソフトスキルの重要性を認識するようになってきた。技術は変化するものであるゆえにハードスキルの要件は常に流動的だが、ソフトスキルは人間の基本的な行動に関するものであり、不変のものである。

技術革新のスピードが速いシリコンバレーではチームとうまくコミュニケーションを取り、協力し合えるリーダーの存在がプロジェクトの成功を大きく左右する。ソフトスキルに磨きをかけることで、リーダーは社員とのコミュニケーションを円滑にしたりモチベーションを高めたり、最終的にチームが会社の目標に貢献することができる。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校のシリコンバレー専門教育学部長であるP.K.アガーワル氏は以前はテクノロジー業界の幹部として活躍した人物である。彼が指摘するには「ソフトスキルは仕事の人間関係に多大な影響を与え、ハード面のテクニカルスキルをよりよく活用し、成長させることができる」と話す。

ソフトスキルはその人の性格の一部であると思われがちだが、実際にはどの職業でもハードスキルと同じように、集中的なトレーニングによって身につけることができる。

しかし「ソフトスキル」という言葉にはブランディング上の問題がある。なぜなら「ソフトスキル」という言葉は「柔らかい」という印象を与えてしまう。ソフトスキルはハードスキルよりも簡単に手に入るように聞こえてしまう。

ソフトスキルはある種、天性のもので、他の人よりも優れた能力を自然に発揮する人がいるようだ。しかし、これらのスキルは習得することもできる。そのため、シリコンバレー企業は、社員とリーダーの両方に対して、ソフトスキルのトレーニングに多くの投資をしている。

このような投資はクラスでの研修、オンデマンドのオンライン学習へのアクセス、大学などでの授業料の払い戻し、書籍やその他の学習教材を自分で購入する補助など、さまざまなものがある。

時代が進むにつれ、シリコンバレー企業では社員のソフトスキルやリーダーシップがますます重視されるようになりそうだ。

[日経産業新聞2023年1月24日付]