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楽天G、社債残高1.8兆円超 21年末比4割増 個人向け債、利率3.3% 財務戦略、難度高まる

楽天グループは27日、個人向け社債2500億円の発行条件を決めた。これにより社債発行残高は子会社を含め1.8兆円超と21年末に比べて約4割増える。携帯電話事業のキャッシュフロー(現金収支)改善が遅れ、財務負担が増している。借り換えのハードルも上がっており、財務戦略の難度が高まっている。

 

27日、2月10日発行の個人向け債の条件を決めた。満期までの期間は2年。利率は3.3%。2022年6月発行の1500億円分の個人向け債(3年債、0.72%)より年限は短いが利率は大幅上昇した。主幹事の大和証券によると、国内の個人向け普通社債では09年のソフトバンクグループの3年債(4.52%)以来の高さという。

楽天Gは社債発行による調達先を広げている。22年11月にドル建て債を5億ドル(当時で約700億円)出したのに続き今年に入り追加で4.5億ドル分を出した。ドル建て債の最終利回りは12%。子会社の楽天カードも22年12月に個人向けに5年債500億円を出した。

調達を多様化しているのは需要側の要因もある。国内機関投資家向けの発行残高は本体と楽天カードで計約7000億円。5000億円程度のソフトバンクグループより多い。ある社債投資家は「機関投資家は金利上昇で含み損も発生しており楽天G債をこれ以上買う余裕はない」と話す。

楽天Gは一連の社債発行について「以前から予定していた」(広報)とする。償還資金は銀行・証券子会社の新規株式公開(IPO)や通信インフラ子会社への出資受け入れ、資産売却などで賄う方針で「中期的なネットDEレシオ(負債資本倍率)への影響はニュートラル」と説明する。

手元流動性についても22年7~9月期の決算発表で広瀬研二最高財務責任者は「適切な現金残高を維持する。未実行の融資枠やコマーシャルペーパーの資金枠もあり問題ない」と述べている。融資枠は現在、1500億円ある。

キャッシュフローの改善は遅れている。非金融事業の営業キャッシュフローから設備投資を引いた「フリー・オペレーティング・キャッシュフロー(FOCF)」は22年12月期に連続で赤字となったもよう。携帯電話事業の設備投資が19年初めから22年9月までで1.3兆円を超え、収支を圧迫する。

債務不履行の懸念度合いを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率は22年初めの1%程度から足元で4%程度に上がった。土屋アセットマネジメントの土屋剛俊社長は「社債投資家や、楽天Gに融資する銀行など楽天関連の債権を抱える投資家がリスクヘッジのため使っている」と話す。

流通市場の社債価格も下落(利回りは上昇)しており、33年12月償還の社債の利回りは4%弱と発行時の1.3%を上回る。

今後の焦点はまず、既発債の借り換えがスムーズに進むかだ。年内に780億円分が償還予定で、うち680億円分はハイブリッド債だ。発行時の利率は2.35%。足元の状況をみれば借換時に利率が上がるのは避けられない。社債償還は24年に約3800億円、25年には2500億円分控える。

もう一つは銀行・証券子会社のIPOや非中核事業の売却などの動向だ。UBS証券の福山健司氏は未実行の融資枠なども考慮すれば「今後1~2年で最大5000億円の調達は可能では」とみる。金融事業などは好調を維持している。資金繰りを賄う間に携帯電話事業の収支改善を急ぐ必要がある。

(井口耕佑、西城彰子、小池颯)