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マンションの修繕積立金 工事費足りず値上げも

マンションを購入すると、税金や管理費などの「維持費」がかかります。毎月払う費用の一つが修繕積立金です。将来のマンションの修繕に使うお金ですが、後から値上げが決まるといったトラブルもあります。

Q 修繕積立金は何に使うのですか。

A 主に建物や設備などマンションの共用部分の修繕に使います。どんな建物も時間がたてば劣化します。長い間放置すると雨漏りをする、水道水が濁るなど、住環境に大きく影響します。共用部分の大規模工事には数億円といった単位でお金がかかることがあります。そこでマンションの購入者(区分所有者)が少しずつお金を積み立てて工事に備えます。

Q 管理費との違いは。

A 管理費は共用部分の清掃やごみ処理、エレベーターの点検など日常的な管理費用に充てられます。新築マンションの場合、修繕積立金や管理費は発売時点で決まっているのが一般的です。

Q 修繕積立金の金額は誰が決めるのですか。

A 将来の修繕工事やその時期の計画を基に、マンションの区分所有者全員で構成する管理組合が決めます。不動産コンサルティングのさくら事務所(東京・渋谷)の土屋輝之氏は「新築の場合は一般にマンションの管理会社が修繕計画を作り、金額を決める」と説明します。その後、管理会社の提案を踏まえ、管理組合が修繕計画や金額を見直すこともあります。

Q 毎月の修繕積立金はいくらくらいですか。

A 国土交通省の2018年度の調査によると、1戸あたりの月平均額は約1万1000円です。マンション管理を手掛ける大和ライフネクスト(東京・港)によると「建物の形状や築年数などによって金額は異なり、3万円を超えることもある」そうです。金額は一定で変わらない方法と、段階的に引き上げる方法があります。

Q 老後に値上げされると家計への影響が大きそうです。

A 修繕積立金の大幅な不足が明らかになり、値上げや「一時金」を徴収するケースもあります。「人件費や資材費の上昇で当初の計画より工事費が膨らむケースが増えている」(大和ライフネクスト)のが一因です。国交省の調査では修繕計画に対して積立金が不足しているマンションは全体の3割超あります。

Q それは心配ですね。

A 修繕工事はマンションの資産価値を維持するためにも欠かせません。しかし、「積立金が足りないことが分かっても、住民の反対で値上げできないケースがある」とさくら事務所の土屋氏は指摘します。積立金の状況を定期的に把握し、早めに対策をとることが重要といえます。

(勝莉菜乃)