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迫る学校崩壊 地域は国の指示待ち脱せ 大正大特任教授 片山善博氏

鳥取県知事や総務相を歴任し地方自治に詳しい片山善博大正大特任教授は、現在の学校教育の問題点について、国の指示待ちで地域の教育を地域で考える姿勢に欠けていることだと指摘する。

――公立小中学校の統廃合が進んでいます。

「論点は2つある。一つは効率性の問題。あまり小規模な学校に教員や予算を配分することは財政的に無理がある。文部科学省は乗り気ではないが、今の予算の仕組みではやむを得ない。批判はあるが、そういう立場はあって当然だ」

「もう一つは、地域社会の教育環境や公立学校の持つ意味を重視する立場だ。かつては、こうした主張が大勢だったが、最近は減ってしまった。教育委員会も国の意向に沿って、反対する人をいかに説得するかという立場になっている」

「明治時代の学制発布で教育制度が整備された時は、教育は極めて地域の問題だった。地域の人が私財を提供し校舎を建てもした。今は国の問題だとみなす人が多い。地方自治の問題、教育委員会の責任という意識はほとんどない」

「統廃合も同様だ。あくまでも設置者である市区町村が国の指針を参考に、自分たちの問題として自分たちの責任で決めればいい。結論は『小規模でも地域に学校を残す』でもいいし、『将来の子どもの数を考えて統合する』でも、どちらでもいい。重要なのは地域の教育をどうしていくかを、地域が真剣に考えることだが、それができていない」

――学校への関心が弱まっているのでしょうか。

「地域の教育を充実させるために皆で意見を出し合い、議論をして合意形成をするプラットフォームがない。だから何か問題が現場で起こるとすぐに文科省は何をしているのかという話になり、それに国はこと細かな通達を出す」

「いじめも不登校も教員の多忙化も同じで、現場の問題なのに自分たちで解決できず、何かというと国頼みで、主体性がない。責任の所在が不明瞭な無責任体制になっている」

――これでは公立学校は崩壊しかねません。

「公立学校は守るべきだ。どんなに貧しい人でも普通教育を受けられる制度は近代国家の必要条件だ。だからあの貧乏な時代に、明治政府は全国津々浦々に小学校をつくり、そこから国を支える人材が生まれた」

「近年は国の公立学校への力の入れ具合が減っている。私立出身の政治家や官僚らが増えたことも一因だろう。学制発布は人材育成を寺子屋のような一部の人向けの私的サービスから、行政が担う皆教育に転換する大革命だった。今の公立学校は空気や水のような当たり前の存在になり、ないがしろにする傾向にある。これは問題だ」

(聞き手は横山晋一郎)