ウクライナでは冷戦期につくられたシェルターや地中深くにある地下鉄駅が住民の避難場所になった。日本政府も有事での必要性を認識し、22年12月に決めた安全保障関連3文書でシェルター整備の方針を明記した。
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ミサイル攻撃への対応として「様々な種類の避難施設の確保をする」と盛り込んだ。公共施設だけでなく商業ビル、個人住宅といった民間の建物への設置も推進する。
まず23年度にシェルターに必要な仕様や性能の技術的な分析を始める。爆風に耐えられる強度や壁の厚さ、設置にかかるコストなどを調べる。それを踏まえて具体的な支援額や要件を調整する。
ビルを新設・建て替えする際の設置費や、既存の建物を避難場所に指定した場合の維持管理費などへの補助が浮上する。
シェルター整備は海外が先行する。中国の圧力を受ける台湾は10万5000カ所のシェルターがある。定住人口の3倍超を収容できる計算だ。
公共施設や一定の規模のビルなどに設置を義務付ける。平時は地下駐車場などに兼用して所有者の負担を減らす。
イスラエルは公共施設や商業ビルに設置義務があるほか、全新築住宅内に壁を強化した「安全区画」を設ける必要がある。
軍事的な緊張が高い国だけではない。シンガポールも全ての新築住宅に家庭用シェルターを設けなければならない。地下鉄駅や学校などには公共シェルターがある。
中立国のスイスは冷戦期に新築住宅へ設置を義務付けた。自治体は住民が有事の際にどのシェルターに入るかを割り当てた。全国に37万カ所あり、人口を上回る900万人分の収容力がある。
日本はミサイルの爆風を防ぐ強固な建物を指定する「緊急一時避難施設」が22年4月時点で全国に5万2490カ所ある。このうち被害を防ぐ効果が高い地下施設は1591カ所にとどまる。設置の義務付けはない。
シェルターに明確な定義はなく、一時避難場所の位置づけから分厚い扉や備蓄機能を備えるものまで様々なタイプがある。核攻撃に備える「核シェルター」には放射性物質の除去装置も要る。
NPOの日本核シェルター協会によると既存の商業ビルの地下を核シェルターに改修する場合、数千万円程度はかかる。普及には企業のコスト負担の軽減が必要だ。
米国は現地メディアによると、冷戦期に公共の建物の地下などを核攻撃にともなう放射性物質から守る施設に指定し、補助金を出す仕組みがあった。1970年代に打ち切り、現在は大半が使用不可能とされる。
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