東京カンテイ(東京・品川)が24日発表した2022年の都心6区の中古マンションの平均価格は9800万円と1億円の大台に迫った。「パワーカップル」と呼ばれる高所得の共働き世帯が、優良立地の物件を高値をいとわず購入している。低金利でローンの金利負担は軽いが、物件取得に必要なコストは1993年以来の高水準となってきた。金利上昇のリスクも大きくなっている。
東京カンテイによる東京6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)の中古マンション平均希望売り出し価格(70平方メートル換算)は前年比7%上昇した。遡れる04年から2.2倍となった。23区全体でも8%上昇の6842万円だった。23区の住宅地価は年2%程度しか伸びておらずマンション人気が顕著だ。
「かつて『億ション』は富裕層が買うものだった。今や、1億5千万円程度までの物件なら有名企業に勤める『パワーカップル』が購入の中心だ」。高額中古物件の仲介を手がける三井不動産リアルティの川村康治・青山リアルプランセンター所長はこう話す。
都心部は残されたマンションの適地に乏しく、資材や人件費など建築コスト上昇で新築価格が高騰している。「相対的な割安さから中古への需要シフトが進んでいる」(三菱UFJ信託銀行の船窪芳和調査役)という。
共働きによる世帯収入の増加と金融緩和が購買力を高めている。リクルートによると21年に首都圏で新築マンションを契約した人の平均世帯年収は1019万円と08年に比べ38%増えた。夫婦などで借り入れる「ペアローン」を組む比率は世帯年収が1000万円超の世帯では7割を上回る。「条件次第で年収の10倍まで貸せる」(金融機関)といい、1億円の物件は手の届く範囲だ。
物件を購入する際に必要な取得費を物件費と住宅ローンの金利に分解すると金利負担の低下が鮮明だ。ニッセイ基礎研究所の佐久間誠主任研究員が、23区内で販売された新築マンションを30年の固定金利型ローンで購入した場合の支払いを分析したところ、金利の割合はバブル期の約5割から22年は16%に下がった。
もっとも、22年の総取得費は1億1450万円とバブル経済崩壊から間もない1993年以来の水準まで高まってきた。バブル期と異なり実需が主導だが、過熱感を警戒する声も出ている。日銀の政策修正で長期金利が上がり始めたこともマンション市況には逆風だ。
三井不動産リアルティの川村氏は「足元では実需層の様子見が広がっている」と話す。東京カンテイによると東京23区の中古物件の流通戸数は22年12月に1万4328戸と前年同月から26%増え、在庫が積み上がりつつある。東京カンテイの高橋雅之主任研究員は「デベロッパーが価格設定を主導する新築と異なり、市場で売買される中古の価格の方が先に調整される可能性がある」とする。
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