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SNSが奪う時間、あなたのもとに アプリで可視化 米BetterYou CEO ショーン・ヒギンズ氏

米BetterYou(ベターユー)は時間の利用傾向を可視化し、健康維持や生産性向上を助けるアプリ「BetterYou」を手掛ける。ショーン・ヒギンズ最高経営責任者(CEO)にデジタル空間とうまく付き合う術(すべ)を聞いた。

 

――BetterYouはどんなアプリですか。

「『もっと眠りたい』『運動もしたい』と思っても、現代を生きる私たちには時間がない。BetterYouはLINEやユーチューブなど1万以上のアプリやサービスと連携し、時間の利用傾向を把握できる。利用者が登録した予定が実行されると自動でチェックが入り、時間になっても実行されないとリマインドを送る機能などがある」

「我々が『やるべきこと』と『実際やっていること』にはしばしばギャップがあり、それを埋めるのに役立つ。私自身、かつて別の会社を立ち上げたころには多忙を極め、いつも睡眠不足を感じていた。だがあるときスマホの利用履歴を調べると、日に3時間もユーチューブの動画を見ていて驚いた。日々、自分が時間をどう使っているか把握できれば『次の動画を見よう』といった誘惑を逃れて別の選択ができる」

――SNSを利用していると時間を忘れる感覚に陥るのはなぜでしょうか。

「SNSは利用者のアテンション(注意)に焦点を当てたビジネスだ。つまり、利用者の注意を引きつけ滞在時間を長く維持することで広告収入を得るというモデルを成立させている。次の動画や投稿におのずと誘われるデザインにしてあるので、ひとたび手を付けたお菓子をやめられないように逃れられなくなる」

「人は『もっと時間があればいいのに』と思っていて、それは実はSNSが追求することとは正反対の欲求だ。そこで当社は利用者の意思を重視し、広告モデルではなく定額制のサービスにしている。米国で100以上の企業や教育機関に採用されており、4月からは日本でも提供予定だ」

――SNSの使用を控えるよう促すことに、実効性はあるでしょうか。

「我々が目指すのはツイッターやTikTok(ティックトック)をアンインストールしてもらうことではない。それらとうまく付き合い、時間を有効に使ってもらうことだ。それぞれの利用者の生活や目標に合わせてリマインドをする」

睡眠や運動など、様々な活動に費やした時間を可視化できる

――デジタル空間にはどう向き合っていくのが望ましいと考えますか。

「米国では人々が自由時間の9割を電子機器に費やしているとの調査結果がある。メタバース(仮想空間)の進化に伴いVR(仮想現実)などが普及すれば、デジタルの占有時間はさらに増えるはずだ。自らの時間の使い方を可視化し、『別の選択』を促すツールはより重要性を増すだろう」

若年層の依存、事業者自ら対策

SNSへの過剰な依存は若年層のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすとの懸念が強まっている。米ペンシルベニア大学の調査では、大学生のフェイスブックやインスタグラムなどの利用時間を30分以内に制限したところ、落ち込みや孤独が大きく改善された。日本では東京都健康長寿医療センター研究所が2021年、東京都内在住の2万人強を対象に調査を実施した。ツイッターを頻繁に利用する人は、世代によらず精神的健康度が低い傾向にあった。

こうした懸念を受けて、事業者側の対応は進みつつある。米メタは23年1月、インスタグラムなどにおける若年層の保護を強化すると発表した。性別情報を利用して広告の配信対象を絞り込む機能を10代の利用者に対して使えないようにする。利用者の自己努力だけに頼らない規制のあり方の議論が、日本でも重要性を増している。

(高崎文)