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配当と優待は年に数百万円分 時流を受け配当株に軸足 配当・優待長者のスーパー投資術(2)

生活費支出は着実に増えているが、株式の「配当」や「優待品」でインフレに立ち向かう投資家もいる。高配当株や優待株への投資で収入を増やし、優待品で生活の質を向上させているという3人の個人投資家の事例を紹介しよう。2人目は安定配当株と優待株に投資している、なちゅさん(ハンドルネーム)だ。

 

緻密な企業分析に基づく銘柄選びで、売却益も狙える優待株に投資してきたなちゅさん。そんななちゅさんが、優待株だけでなく配当株にも投資を始めたのは2020年。コロナショックの年だ。コロナ禍による業績悪化で優待の改悪や廃止が相次いだことが主因かと思いきや、そうではなかった。

「その頃から企業が株主還元として配当を意識するようになってきた。それに気付き始めた投資家が高配当株を物色する流れも起きていた。そこに着目して配当株に注目するようになった」となちゅさんは振り返る。

求めるのは安定配当

なちゅさんが求めているのは「安定的な配当」。そのために重視するのは、利益の増加が継続して期待できること。IR(投資家向け広報)フェアなど企業に直接話を聞ける場に積極的に参加し、注力している業務やその将来像を確かめて、成長余地を見極める。その上で配当性向が50%以上など高くなりすぎていないか。赤字でも配当を出すような政策をとってはいないかなどを確認し、眼鏡にかなった銘柄にだけ投資する。

この視点で23年に期待できる配当株として、なちゅさんは商社株、地銀株を挙げる。資源高が23年も続くとみており、資源を扱う商社は利益拡大が見込めると予想。その上、配当性向が30%以下という銘柄もあり、今後の配当性向引き上げも期待できる。地銀株については、配当政策を見直したばかりという銘柄が散見され、今後の配当利回り上昇が期待できるとの見立てからだ。

資金の一部では、コロナショックで価格を下げた不動産投資信託(REIT)にもいくつか投資している。「テナントと長期契約を結び、コロナによる影響は薄いのに地合いの悪さで価格が下がり、分配金利回りが上昇していた銘柄があった」(なちゅさん)。その代表と話すのがイオンリート投資法人だ。

株主優待は投資のアンテナ

資産ポートフォリオに占める配当株比率は高まっているが、優待株投資も継続するつもりだ。株主優待は投資のアンテナを立てることにつながるからだ。期待できるセクターの中で、優待を実施している企業があれば、まずは優待が取得できる最低単元を買う。優待をもらいながら決算資料や株主通信を受け取り、その企業を一層詳しく知ることができる。その上で利益拡大が見込めると判断できれば、売却益狙いに切り替えて追加の資金を投下する。

「23年は原材料高を価格に転嫁できなかった『出遅れ食品株』に目を付けている。徐々に値上げできるようになり、業績の改善が見込めそう。中でも注目は、優待を実施している明治ホールディングスだ」

[日経マネー2023年3月号の記事を再構成]