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イーサリアム共同創設者、ネットの「信頼」再構築を ギャビン・ウッド氏

世界における「Trust(信頼)」はインターネットを含むあらゆる分野で低下している。グローバリゼーションが進んだ世界で地球の裏側にいる会ったこともなければ、社会的なつながりもない人を信じろということに無理がある。

(米グーグルなど巨大テック企業を中心とした)インターネットは信頼を前提に成り立ってきた。他人を信用し、期待通りに行動してくれると信じてきたが、多くの場合そうはならなかった。

1人のミスで巨大なIT(情報技術)サービスが止まったり、悪意ある管理者が個人情報を盗み見したりした。「信頼」と呼んできたものに根拠はなく、相手のことを確かめようがないので「妄信」しているにすぎなかった。

多くの人が利用するネット上のシステムを特定の企業や少人数の利害関係者が制御できてしまうこと自体に問題がある。残念なことに、人を信じることを前提にしたネットの運営は限界にきている。

経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業大手FTXトレーディングはこうした問題点が露呈した典型例だ。我々が提唱する「Web3」とは正反対だ。

こうした事態を改善するため我々は新たなネット基盤の開発を進めている。(改ざんが難しい)ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使うことで、政府や特定の企業を介さずに人々が交流できる。

仮想通貨はその一例だろう。政府や特定の企業ではなく、個人が主導するボトムアップ型のグローバル化という新たな手法を示せる。

従来のトップダウン型のグローバル化はある面で失敗だった。政府間で共通のルールをつくろうとしてきたが、いまや各国は互いをあまり信用していない。

保護主義が台頭し、各国が協力してグローバル化を進める価値も下がった。今日の世界は信頼の欠如の影響を戦争というかたちで目の当たりにしている。

ボトムアップ型のグローバル化は必要な技術がそろえば、従来のトップダウン型をしのぐ速さで発展するだろう。

ネットの成り立ちを思い出してほしい。国際団体が音頭を取って世界的なシステムを構築した電話網に対し、ネットは全体を管理したり計画したりする組織がなかった。混沌としたなかで形づくられていったが、電話よりも速く成長した。

世界全体で発展していくために今後も(仮想通貨などを通した)グローバル化は重要だ。個人のアイデンティティーなど変えてはいけないものに配慮しながら、うまく進めていく必要がある。新たなネットの社会で人々が直接交流できる機会が増えれば、人々のグローバル化の捉え方も変わっていくはずだ。

(リスボンにて、聞き手は水口二季)

Gavin Wood 英コンピューター技術者。仮想通貨イーサリアムの共同創設者。ブロックチェーン技術で脱中央集権化を図るインターネットの新しい概念「Web3」を提唱。新しいネットインフラ「ポルカドット」の開発を率いる。