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不安定さ増す債券市場、社債発行への影響警戒 アサヒは銀行借り入れを検討

債券市場が不安定さを増し、企業が社債発行への影響を警戒している。2023年に償還期限を迎える国内社債は約8兆円弱あり、借り換えなどの際に調達コストが上昇したり想定した金額を調達できなかったりする恐れがある。資金調達が滞って投資が遅れるなどすれば、成長戦略の足かせとなりかねない。

 

日本経済新聞が集計したところ、23年内に償還期限を迎える公募社債(高速道路会社など除く)は現存額ベースで約7兆6000億円ある。

償還時の対応について社債による借り換え以外の選択肢を検討する動きが相次ぐ。アサヒグループホールディングス(GHD)は「金融市場や当社の資金状況を踏まえて対応を検討する」としつつ「条件次第では銀行借り入れも視野に入れる」と話す。

NTTは3月が償還期限の1000億円について「社債や銀行借り入れも含めて総合的に判断する」。富士フイルムホールディングスは3月に期限を迎える1000億円について借り換えず手元資金で償還する方針だ。

不安定な市場に懸念の声も上がる。東京電力ホールディングスの送配電子会社、東京電力パワーグリッドは「ベース金利の上昇で社債金利の水準も上昇しており、金利コストの負担増を懸念している」。富士フイルムは「安定した金利を望む」とする。

NTTは「将来はゼロ金利政策が解除され、当社の調達金利も上昇すると考えている」という。三井不動産は「金利の先高観があり、資金調達への影響を注視している」と指摘する。

債券市場は不安定だ。長期金利の水準は満期までの期間が9年や8年などの国債利回りよりも低く、ゆがんだ状態が続く。市場ではいずれ日銀が緩和策を再修正し、長期金利が大きく上昇するとの警戒が強い。金利が上がれば保有債券の価値が下がり、評価損が出る場合もある。

国内運用会社の社債投資家は「金利上昇リスクがある分、社債には高めの利回りを求めざるを得ない」と話す。「5年程度までの社債なら出せても10年より長いものは難しい」(国内証券)との声が聞かれる。

イオンは今春に予定していた資本と負債の中間的な性質をもつハイブリッド債(劣後債)発行の見直しを検討しているようだ。13年に調達した600億円のハイブリッド・ローンを社債に借り換える方針だったが、金利環境が不透明なことからローンでの借り換えに変更するとみられる。イオンは「まだ決まった事実はなく、決まり次第公表する」としている。