· 

米金融大手、人員削減7000人規模 拡大路線転機に

ゴールドマンのソロモンCEOは投資銀ビジネスの回復になお時間を要するとみる=ロイター

【ニューヨーク=斉藤雄太】米大手金融機関の拡大路線が転機を迎えている。2022年12月期決算では投資銀行業務が主力のゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの純利益が前の期比3~5割程度減り、両社は大規模な人員削減を実施。リストラの波は住宅ローンや資産管理分野にも及び、直近2カ月ほどで判明した米金融大手の雇用削減は7000人規模に上る。先行き不透明な経営環境で各社は経費の抑制を急ぐ。

「20年後半から21年にかけて資本市場を介するビジネスの環境は正常ではなかった。大規模な財政刺激策で多くの(資金調達などの)活動が前倒しで、過剰に行われた」。ゴールドマンのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は17日、22年12月期の純利益が前の期比48%減と落ち込んだ理由をこう釈明した。

足を引っ張ったのは本来強みを持つ投資銀行業務の不振だ。20年春の新型コロナウイルスの流行後、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和や米政府の財政出動で株高・金利低下が進み、企業の株式・社債発行による資金調達やM&A(合併・買収)が活発になった。これらを支援する投資銀の手数料収入の急拡大でゴールドマンやライバルのモルガン・スタンレーは21年12月期に最高益を記録していた。

22年12月期は一転、FRBの金融引き締めや市場の混乱で投資銀ビジネスは急速に縮小した。金融情報サービスのリフィニティブによると、世界全体の投資銀の手数料収入は前年比3割強の減少とリーマン危機のあった08年以来の落ち込みとなり、米銀大手に強い逆風となった。

投資銀ビジネスは23年も厳しい状況が続きそうだ。ゴールドマンのソロモンCEOは「資産価値の大きな変化に人々が適応するには経験上、(調整が始まってから)1年~1年半はかかる」と指摘。企業や投資家の動揺が収まり、資金調達やM&Aが再び活発になるまでは少なくともあと3~6カ月は必要になるとの認識を示した。

ゴールドマンは22年12月期に不良債権処理などに備える与信費用を前の期比7.6倍の27億ドル計上した。JPモルガン・チェースなど商銀主体の大手4行も合計で157億ドルを計上し、217億ドルの戻り益が発生した前の期から大幅に利益が減る要因となった。23年の米景気は「緩やかな不況になるかもしれないし、そうでないかもしれない」(JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEO)と先行き不安がくすぶる。

17日までに出そろった米銀大手6行の22年12月期決算は純利益がそろって2桁減になった。投資銀の不振や与信費用の増加は各行に重荷となったが、金利上昇による利ざやの改善で商銀主体のJPモルガンとバンク・オブ・アメリカは相対的に減益幅が小さかった。バンカメのブライアン・モイニハンCEOは「23年も純金利収入は順調に伸びる」と話す。

コロナ後の右肩上がりの市場環境が変わるなか、各社は経費の見直しを急いでいる。ゴールドマンは決算説明会で1月に従業員の約6%に相当するおよそ3200人を削減したと正式に表明し、「通信費やテクノロジー関連費用、広告費などの削減にも積極的に取り組んでいる」(デニス・コールマン最高財務責任者)という。

同社は直近3年間で人員を1万人以上(3割弱)増やし、投資銀ビジネスのシェア拡大や新たな収益源と位置づけた消費者金融ビジネスの強化を進めてきた。収益が伸びている局面では目立たなかった経費の急増が足元で浮き彫りになっている。収入に対する経費の割合を示す効率性比率は急速に悪化。22年の同比率は65.8%と目標とする60%を大幅に上回った。

モルガン・スタンレーも決算説明会で22年12月に全体の2%にあたる約1800人の削減に踏み切ったと説明した。ジェームス・ゴーマンCEOは「人員の適正化に関して我々はここ数年、何も手を打たなかった。率直に言って少し遅れていた」と語り、今後は厳格な経費管理に努める考えを示した。

人員削減を急ぐ金融大手は投資銀主体の2社だけではない。米メディアはカストディー(資産管理)業務大手のバンク・オブ・ニューヨーク・メロンが23年中に従業員の約3%にあたる1500人規模の人員削減を計画していると報じた。

金利上昇で住宅ローン需要が冷え込むなか、ウェルズ・ファーゴは1月に同事業を大幅に縮小する計画を公表し、22年10~12月期に3億5300万ドルの退職金費用を計上した。同12月には数百人規模の削減を実施したと伝わる。チャールズ・シャーフCEOは「同業他社と比べ我々は依然として従業員数が多く、経費も多い」と指摘し、一段の削減余地があるという考えを示唆した。

欧州でも大手銀のリストラが広がる。英紙フィナンシャル・タイムズは経営再建中のクレディ・スイスが欧州の投資銀担当者の10%強を削減する計画だと伝えた。同社は昨年12月にかけてグループ全体の5%にあたる2700人の削減を進めたが、これに続く動きだ。英バークレイズなども数百人規模の削減が報じられている。各社が厳しい収益環境の継続を前提に守りを固める様子が浮かぶ。