· 

米不動産強まる先安観 REIT、資産総額比2~4割安く

米国の不動産価格が一段と下落するとの見方が強まっている。住宅やオフィスに投資する上場不動産投資信託(REIT)の時価総額は、保有物件の価値に対して2~4割安い水準に落ち込んだ。主要企業の業績不振でオフィス利用の減少が続き、空室率は高止まりが続く公算が大きい。住宅も実質賃金の目減りで入居需要が冷え込む。米国の実体経済の落ち込みがさらに進むとの懸念が透ける。

REITは実物不動産に先行する形で、需要や賃料の動向が価格に反映されやすい。QUICK・ファクトセットがまとめた世界の上場REITの時価総額は16日時点で2兆ドル(約256兆円)と、21年末の2.6兆ドルから22%減少した。

米国は景気に底堅さをみせるものの、減少率は23%とエネルギー危機などで景況感が悪化する欧州と同水準だった。日本の減少率(18%)も上回る。

米景気をけん引してきたハイテク関連を中心に、企業の業績悪化でオフィス需要が落ち込むとの懸念が根強い。米オフィスREITの時価総額は16日時点で551億ドルと21年末比で40%減少した。

不動産調査会社グリーン・ストリートによるとオフィスを投資対象とする米REITの6日時点の時価総額は、保有物件の評価額である純資産総額(NAV)に対して6割の水準にとどまる。

新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、ロックダウン(都市封鎖)などで不動産市況の不透明感が極度に高まった20年3月と同程度の「割安」水準だ。

景気の減速が進み、オフィス需要が一段と鈍るとの見方が広がる。優秀な人材の獲得へ高機能オフィスに積極投資してきた、ハイテクや金融業界の経営環境は厳しさを増す。顧客情報管理のセールスフォースは1月、人員の1割削減とともにオフィスの一部縮小を発表。メタも複数のビルを手放す。

ハイテク企業が集積するサンフランシスコの空室率は22年10~12月に27%台と、1990年代初頭以降で最高になった。米コマーシャルエッジによると22年11月の平均掲載賃料は前年同月比で3.1%下がり、10月の下落率(0.1%)から拡大した。

新型コロナ禍による構造的な要因もある。在宅勤務が定着し、オフィス利用は戻らない。入退出管理を手がける米キャッスル・システムズの推計では主要10都市の出社率はコロナ前の5割ほどで頭打ちとなった。

不動産サービスCBREは「今後数年で従業員1人当たりのオフィス空間需要は、コロナ拡大前から最大15%減る可能性がある」と指摘する。

住宅分野にも変調が見え始めた。QUICK・ファクトセットによると住宅関連REITの時価総額は16日時点で1939億ドルと21年末比で29%減少した。グリーン・ストリートによると、NAVを2割下回る。

米ネット仲介アパートメントリストの全国家賃指数は22年12月、前月比で0.8%下がった。4カ月間の累計下落幅は3%に達した。同社は「例年冬にかけ賃貸活動が鈍り家賃も下落する傾向にあるが、かなり急激な落ち込みだ」と説明する。

歴史的なインフレが影を落とす。実質所得が目減りし、特に18~29歳の若者の半数が生活防衛のため親との同居を選んでいるもよう。米リアルページの分析では、22年のアパートの賃貸需要が09年以来で初めて供給を下回った。「消費者心理の低下と高インフレで新規賃貸の需要はすべて蒸発した」

全米不動産投信協会(NAREIT)によると22年の米REITの新規上場は1件と、まったくなかった01年以来の少なさだ。増資といった資金調達も21年に比べ7割少ない415億ドルにとどまった。マネーの流入は細っている。

不動産の現物価格はまだ上昇が続く。総合的な値動きを示すコースター米商業リピートセール指数やS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(全米)の前年同月比伸び率は22年春のピークから急減速しているものの、依然としてプラス圏にある。

だが不動産を巡る環境の悪化で、今年は鑑定評価額の引き下げが起こりやすいとの指摘が目立つ。「利上げが需要を冷やした。23年前半の不動産価格に下落圧力がかかる」。米不動産投資大手PGIMリアルエステートのエリック・アドラー最高経営責任者(CEO)はこう指摘する。

不動産価格の下落は、オフィスや住宅の開発を抑える要因となる。米アトランタ連銀が国内総生産(GDP)を予測する「GDPナウ」によると、22年10~12月期の実質成長率は年率換算で4.1%を見込む。住宅投資の低迷が1.14ポイント分、押し下げている格好だ。グローバルマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は「米利上げの影響が住宅市況に強く効き、経済全体の足を引っ張っている」と分析する。

(今堀祥和、佐藤日菜子)