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ポスト利上げの有望投資先 売られすぎ資産の巻き戻しも 広木隆のザ・相場道

投資環境を展望すると、年前半は米連邦準備理事会(FRB)の利上げが続くが、それによって米国景気は一段と減速感が強まり、それを受けて年後半にはFRBは利下げに転じるだろう。そうであれば、利上げで売られた資産の巻き戻しが期待される。

利上げで売られた資産の代表は、米国のハイテク株に代表されるグロース(成長)株と、海外の不動産投資信託(REIT)。次のチャートはナスダック総合株価指数とFTSE・Nareit 不動産指数(FNER)の推移だが、米10年物国債の利回りときれいに逆相関になっている。

米国のハイテク株にはさらに明るい材料がある。株価に先行してファンダメンタルズ(基礎的条件)が悪化しており、いち早く底を打ったとみられるからだ。ナスダック総合の12カ月先予想EPS(1株当たり利益)は既に上昇に転じている。これに米長期金利の低下が加われば、出遅れていたナスダック総合の反騰は力強いものになるだろう。

REITはバリュエーション(投資尺度)の面からも極端に割安と考えられる。米不動産投資顧問のラサール・インベストメント・マネージメントの算出によると、足元では保有純資産(NAV)に比べてマイナス16%のディスカウントで、長期平均から2標準偏差乖離する大幅な割安水準だ。明らかに売られ過ぎの域にあり、戻りの余地は大きい。

際立つインドの成長率

次に、有望な投資先を地域という観点から考えてみよう。前回の記事では23年の日本株が堅調な理由として、国際通貨基金(IMF)の22年10月の世界経済見通しによると、23年も成長率が横ばいを保つのは先進国では日本だけであることを指摘した。この世界経済見通しで新興国を見ると、インドの成長率の高さが目立つ。

東南アジア諸国連合(ASEAN)も相対的に高い成長率を保っている。これらのファンダメンタルズの良さを既に市場は織り込み済みかもしれない。22年のパフォーマンスを振り返ると、世界株安と言える状況下でインド、シンガポール、インドネシアの株価指数はプラスリターンで終えた。これら3カ国の22年のリターンはほぼ同水準だが、過去3年ではインドが抜きんでている。

国連が22年7月に発表した「世界人口推計」(22年版)によれば、インドの人口は23年に中国を抜いて世界一になる。60年代に17億人近くまで増える一方、中国は早ければ23年から人口減少が始まる。その意味で、今年はこれまで世界経済をけん引してきた中国と、成長著しいインドの「主役交代」を象徴する年になるかもしれない。

人口は経済成長のドライバーだ。現在は世界5位に付けているインドの国内総生産(GDP)は、25年に4位のドイツ、27年に3位の日本を抜くとみられている。高い経済成長に伴い、課題だった中間層の薄さも劇的に解消されつつある。インドの中間層世帯は2倍以上増えて1億6500万世帯になるとの予測もある。巨大な購買力を持つ経済圏がインドに誕生する可能性を秘めている。

半導体供給網の一角に

インド経済の強さはIT産業にあるというのは周知の通りだ。この分野でインドは次のステージに踏み出した。きっかけはコロナ禍だ。中国などに依存していた電子部品やハイテク製品が供給制約に直面したことを契機に、「脱中国」を国策として推進している。インド政府は半導体産業の育成に5年間で7600億ルピー(約1兆4000億円)の補助金を拠出する。これらの政策が奏功して、電子機器受託製造世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の工場誘致に成功した。

さらにインドの大手財閥タタ・グループがインド国内で半導体生産事業に乗り出す。日本経済新聞は、「有力財閥の参入により、インドが東南アジアなどに続いて世界の半導体供給網の一角を担う可能性が高まる」と解説している。

インドの成長性は既に市場で認識され、株式市場のパフォーマンスも良好だった。この先は好調さが加速していくのではないか。インド株投資は中長期目線での順張りである。一方、米国のグロース株やREITは状況が一変することによるターンアラウンド、いわば復活に賭ける逆張りだ。資産も地域も、そして戦略も分散させることで、投資妙味が増すだろう。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券チーフ・ストラテジスト。国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。神戸大学大学院・経済学研究科後期博士課程修了。博士(経済学)。