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思考力問う入試 なお模索 共通テスト始まる 出願は伸び悩み、良問評価も分量「多い」

多くの大学で合否判定に使われる大学入学共通テストが14、15日の日程で始まった。思考力を測る狙いで作られた問題を解くには迅速に情報を処理する力が求められ、対応の難しさから一部で出願を控える動きも出始めた。定員が志願者数を上回る「大学全入時代」を迎えるなか、共通テストのあり方を巡り模索が続いている。

 

 

1日目の世界史Bでは、授業で女性参政権や歴史的な貨幣などを学ぶ会話形式の出題が目立った。前身の大学入試センター試験と比べると資料や図表から必要な情報を読み取る問題が多く、教科書の丸暗記では解きにくいのが特徴だ。

出題傾向を評価する声はある。運営する大学入試センターの外部委員会による2022年の検証では「学びの質を問う練られた問題」(数学2・B)、「高校の授業への建設的な提言」(日本史B)との意見が出た。

しかし問題文に多くの情報が盛り込まれているため、読解に時間がかかるとの声も少なくない。ある高校教諭は「思考力というより、問題の設定を素早く理解する情報処理能力が必要だ」と語る。

22年の数学I・Aの平均点は37.96点で、センター試験時代を含め最低だった。外部委員会のうち高校教諭らでつくる分科会は数学1・Aについて、問題や計算量の多さを挙げて難易度が「あまり適切でない」と指摘した。

足元では「共通テスト離れ」の兆しがみられる。入試方法により共通テストを利用するか選べる私立大志願者で受験を避ける動きがある。

22年10月にあった河合塾の全国模試の分析で、私大専願の受験生のうち共通テスト利用を志望する生徒は前年比6.1%減った。減り幅は少子化に伴う模試受験者数の減少(同3.3%減)よりも大きい。

高3全体でみると、23年の共通テストの出願率は45.1%で前年比横ばいだった。22年に59.6%に達し過去最高の更新が続く大学・短大進学率と比べると、共通テストの出願率は伸び悩む。

河合塾の近藤治・主席研究員は「センター試験より分量が多く内容も高度になった。『対応が難しい』と判断する高校生が増えている」と指摘する。

出願が伸び悩む背景には学力テストを課さない選抜の広がりもある。21年春の大学入学者選抜のうち面接や小論文で評価する総合型は12.7%、高校の推薦に基づく学校推薦型は37.6%で、合わせて初めて5割を超えた。

少子化でも大学の入学定員は増え、河合塾によると早ければ23年にも「大学全入」となる可能性がある。文部科学省幹部は「学生確保に向け大学が総合型や推薦を増やせば、共通テストの受験者は先細りする」と懸念する。

共通テストには出題内容を通じて学習指導要領が求める「主体的・対話的な学び」への転換を高校側に促す効果も期待されている。共通テスト離れが進むと、こうした導入の意義も揺らぎかねない。

テストの改善に向けたポイントとなるのが25年だ。新学習指導要領を反映し、同年1月実施分から科目が刷新される。プログラミングなどを扱う新科目「情報1」を新設するほか、国語の問題構成や地理歴史の科目も大きく見直す。

大学入試センターは「高校や大学の教育が変わろうとしていることを踏まえて改善を図る。学習指導要領に基づく学習で対応できる問題作成を目指していることを周知していきたい」としている。

大学入試に詳しい東北大の倉元直樹教授は「過去2回をみるとどんな力を測りたいか分かりにくい問題が散見され、選抜試験として課題が残る」と指摘する。25年の見直しに向けては、現場の混乱を招かないよう丁寧な説明も求められる。

 

 
大学入学共通テスト 1990年に始まった大学入試センター試験の後継として、2021年1月から導入された。今回が3回目。大学入試に対する「知識偏重」といった指摘を踏まえ、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)が14年に「思考力・判断力・表現力」を評価する新たなテストの導入を答申。文科省は国語と数学での記述式問題の導入、英語民間試験の活用も打ち出したが、採点の公平性などを巡る批判を受けて見送った。23年は過去最多の870校の大学・短大が入試で共通テストを利用する。