· 

マンション賃料、広さがけん引 分譲高騰で家族向け人気

建築費の上昇などで新築マンション価格の高騰が続き、購入に二の足を踏む世帯の選択肢になっている。郊外の物件の人気も高い。新型コロナウイルス禍で在宅勤務が広がり、広い部屋に住みたいという需要がマンション市場を活気づかせている。

「20~30代の若いカップルや家族からの問い合わせが増えた」。都内の不動産仲介会社の担当者は2022年の変化を話す。コロナ禍でも底堅い需要はあったが、ファミリー向けの賃貸マンションを探す動きが強まっているという。三井不動産レジデンシャルが22年夏に完成させた東京・門前仲町の物件は、ファミリー向けの部屋は早い段階で入居者が決まった。

「ファミリー向け」の上昇幅、カップル向け上回る

人気は賃料にも表れている。不動産サービス大手のアットホーム(東京・大田)によると、「ファミリー向け」と定義する広さ50~70平方メートル以下の部屋の平均募集賃料は22年11月の東京23区で19万9567円。前年同月比4%上昇し、シングル向け(30平方メートル以下)やカップル向け(30~50平方メートル以下)より伸び率が高かった。

ファミリー向けが前年同月比で上昇したのは首都圏や名古屋市、大阪市など国内全10エリアのうち9エリア。東京23区や神奈川県、札幌市の賃料は統計を取り始めた15年1月以降の最高値を更新した。

「自宅で過ごす時間が長くなり、部屋の数や広さを求める動きが強まった」と不動産情報サイト「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインド(同・港)の川島直也社長はみる。東京都心部のカップル向けの部屋から、郊外の広い物件に引っ越す事例も少なくないという。

アットホームの調査でも、ファミリー向け賃料の22年11月の前年同月比上昇幅は埼玉県で7%、神奈川県で5%と東京23区を上回った。需要が東京の周辺に広がっていることがわかる。

東京23区の賃貸マンションに住んでいた30代夫婦は1年前、関東近県の賃貸マンションに引っ越した。東京都心部への通勤が週1回に減ったため決断した。賃料は下がったが、広さは6割大きくなったという。

22年11月の東京23区のカップル向け賃貸の平均賃料は13万3523円。関東近県のファミリー向けの平均賃料は埼玉県9万7709円、神奈川県11万5903円、千葉県9万9124円で、専有面積が広くなっても安い。

分譲マンション「いったん購入見送り」

アットホームラボ(同・千代田)の磐前淳子部長は賃料上昇の要因の一つとして「新築マンション価格の高騰が止まらないため、いったん購入を見送る人が出ている」ことをあげる。初めて持ち家を購入する「一次取得者」が今は無理せず、賃貸マンションの契約更新や新たな賃貸物件探しに動いていると分析する。

新築マンション価格は上昇の一途をたどっている。不動産経済研究所(同・新宿)によると、22年1~11月の首都圏の平均価格は6465万円と、3年間で500万円弱上がった。東京23区内で1億円を超えるような高額物件の需要が相場を下支えしている。ただそれは一部の富裕層の話で、多くの消費者にとっては新築マンションは高根の花になった。

中古マンションも高い。ワンノブアカインドが、保有データをもとに推計した首都圏の中古マンションの平均価格(70平方メートル換算)はこの3年で24%上がった。食品などの物価高のほか今後の金利や景気動向など先行き不透明感は拭えない。「現実と折り合いをつけて賃貸マンションを選ぶ動きもある」(アットホームラボの磐前氏)。住まいの選択に起きている変化はまだ広がる可能性がありそうだ。

3000万円台物件、首都圏は激減

不動産助言会社トータルブレイン(東京・港)が、3000万円台が中心とされる「一次取得者」向けのマンション市場を調べたところ、首都圏の供給物件数(年平均)は2010年ごろと比べ約10分の1に減った。当時は東京23区内でも探せたが、今は埼玉県や千葉県の一部、茨城県や栃木県などに限られる。低金利が支えと言われるものの、新築マンションの購入において若い世代の選択肢は狭まっている。

新築マンション価格の先行きについて杉原禎之副社長は「高騰する建築費や用地代などを踏まえると下落する可能性は低い」とみる。中古物件も高止まりが予想されており「23年も全国でファミリー向け賃貸マンションの人気は続く」(アットホームラボの磐前淳子部長)との見方が多い。

(原欣宏)

賃貸でもスマートホーム、安全性も人気

「スマートホーム」化は賃貸マンションでも進んでいる。通信環境が整っていれば、スマートフォン経由でドアの開け閉めのほか、照明やエアコンのオンオフを操作できる。顔認証システムで入館可能な物件も目立つ。窓の開閉がスマホに通知されるなどセキュリティサービスもあり「若い女性の関心が高く、周辺相場より賃料が高くても選ばれやすい」(不動産仲介会社)。